Folge 32 ケーキ
文字数 2,584文字
気づけばもう昼。
咲乃とのキスをたっぷりした後は二人共疲れてソファーでゆったり。
そこまでするなよって話だけど。
だってさ、していい間柄になったわけだし。
その前からされていたけど、オレからもしていいわけで。
お互いの気持ちが通じ合う感覚が新鮮だったから。
その気持ちをぶつけ合うようにしてしまって。
どうやって終わったのか覚えていない。
ほとんど気絶だったんだろうな。
そこへ聞こえてくる妹たちの話し声。
何やら当てっこをしているみたい。
ケーキ、だよな。
でもなんでケーキの話なんだろ。
ショートケーキが一番好きなのはオレもだ。
ケーキは余程凝り過ぎていない限りどれも好き。
でも回り回って結局ショートケーキが一番になった。
どうもオレが絡んでいそうだ。
ん?
咲乃が寝たふりしたままオレの袖を引っ張っている。
何か言いたそうだ。
耳を寄越せと?
なんだよ、またキスの続きでもするの?
キスじゃなかった。
少しがっかり。
聞こえないように囁き声。
あ、咲乃の声が大きかったから……。
オレは誤魔化しきれないのを覚悟で後ろから肩越しに咲乃に抱き着いた。
う。
これ、咲乃にするのは恥ずかしい。
妹なら平気なのにな。
げ。
ツィスカが怒りの声を出しているんだけど。
ヤバいかな?
あわわ。
こ、怖い。
今日の夜はたっぷりとヨシヨシしてあげないと。
いや待てよ。
今日ってまだ土曜日だよな。
ということは、咲乃がもう一晩泊るの、か!?
それ自体は嬉しいけどさ。
一緒に寝るだろうしさ。
最高かよ。
じゃなくて。
まずいな。
起きているのがバレてる。
だよね。
あの妹相手に誤魔化せた試しがない。
知り尽くされているというのも、嬉しいような悲しいような。
オレ、兄貴だよね?
妹にマウントを取られるとか。
あ、いつもそうだった。
ツィスカって素直過ぎるよなぁ。
可愛い。
としか言いようがない。
ケーキが出されるまで咲乃にくっついていよう。
と思った矢先。
玄関から声がした。
タケルと美咲だ。
二人でケーキを買いに?
ツィスカが一番楽しみにしていたようだ。
満面の笑みで叫んだ。
◇
昼食はカルラが作ってくれたカルボナーラ。
最近はツィスカの料理を口にしていない気が。
オレは料理ができないからその辺は言わないようにしているけど。
絶妙なとろみとベーコンの焦がし具合。
カルラは特に料理が上手。
全員が綺麗に食べ切り、あっという間にデザートの時間になった。
ツィスカ。
お前がドヤ顔で言うことなのか?
言われるこちらもなんだか恥ずかしいし。
言っている内容が、ねえ。
妹以外にって所が明らかにマズイだろ。
その当事者がオレなのだけど。
こいつ……。
とうとうなんでもいいとか言い出したぞ。
失礼な。
どうぜケーキにも負ける兄貴ですよ。
悪かったな!
ああ。
心の叫びが顔に出てしまっていたか。
カルラは本当にそういうとこによく気づくんだよな。
へえ。
カルラの案だったのか。
オレのことならとことん世話を焼いてくれるんだ。
いつも感謝しています。
大好き。
タケルが開封。
なんと、ホールのショートケーキが入っていた。
はは。
ツィスカは少々不服そうだ。
タケルはちらっと美咲を見て話しを続けた。
なんと優しい弟なのだろう。
同じく美咲もだけど。
カルラは手を振って答えた。
振っていない手には包丁を持っていたので少々ドキッとしたけど。
昼間から誕生日会のような盛り上がり。
甘いものは女子の機嫌を良くするものらしい。
大変賑やかな時間となった。