Folge 13 美脚のいじわる
文字数 3,090文字
それからだが。
お近づき記念。
ということで、美乃咲姉妹はウチで夕飯を一緒に食べる事となった。
大勢で食べられるものはなんだろうと話し合った。
結果は焼肉との競り合いで水炊き鍋に。
美乃咲姉妹が二人で鍋はなかなか食べられないとのこと。
そもそもあまり食べたことが無いという理由でもある。
ところで。
ウチの双子が先ほどからう~う~唸りっぱなしなんですけど。
オレの両側は妹のポジションのはず。
だが、片側にいつもと違う顔がくっついている。
その子はずっとニコニコと含み笑いが止まらないでいる。
座るとさらに露出された素足。
強制的に目に入り込んできてまた鼻血が出そう。
気分の良さをアピールするかのようにその両脚をブラブラと。
なおさら気にさせられて……ニヤけてしまうんだよ。
咲乃さんは最初の印象で感じたクールさとは程遠い人物となっている。
はっきり言って、オレにデレデレしている。
いや男ですから、そりゃあこういうシチュエーションは大好物ですよ。
美咲さんがぶつけてくる甘さとは違う濃い甘さ。
クールから濃い甘さというギャップ。
これがこの子の魅力を強烈に引き上げてしまって……。
――――好きかも。
多分それを感じ取ってしまっているんだろうな、妹たちは。
唸り声がどんどん大きくなっている。
この後どうフォローしようか困ったな。
へえ。
ツィスカがカルラの味方をしたよ。
最近レアなシーンが見られるなあ。
いや、そんな平和な話じゃないな。
おい、そんなこと考えながら食べていたのかよ。
お茶碗と箸は持っている。
でもさっきから何も口へ運んでいないぞ。
咲乃さんのブラブラ脚が止まった。
あ、いや、ずっと脚を見ていたわけじゃない!
決して、決してね。
ブラブラ動かす度に感触が伝わって来る。
そんな太ももを見ていたわけじゃない!
いやいや、『見ていた』だと見ていたことになるから『見ていない』んだ!
多分…………。
一口も食べてないよ!?
作った家族がイラッとするから。
ちゃんと食べてからそういうことを言おうね!
結局オレに矛先向くんだよなあ。
でもツィスカを本気で怒らせるとまた怪我をするかもしれない。
ここは美脚とさよならするのは惜しい、いや。
カルラと替わってもらうように話をしないと。
咲乃さんはカルラとオレの顔を数回交互に見てから答えた。
言葉にならない何かを発したカルラが食卓を叩いた。
鍋すら浮いたんじゃないかと思うぐらいの衝撃で。
鍋の出し汁は少し零れたけど。
カルラが怒りを露わにするなんて、これまたレアな光景。
ここまでくると異常事態だ。
明らかにそうなんだけど。
うわぁ、なんでオレがルールを増やされなきゃならないんだよ。
さりげにオレの呼び方がサーちゃんに決定しているし。
都合の悪い所を全部オレに捨てるのはやめてください。
【藍原サダメはポイ捨てを許しません! ポイ捨て、禁止!】
やっぱこれ作った方がいいのかな。
そう言って立ち上がる前に左脚をオレの右足にわざと絡めてから立ち上がった。
やっべ。
バレていたのか。
いや、見ていないから!
ぎゃあー!
バレてるー!
ウィンクまでしてきたー!
あ、でもそれ魅力的。
下手とは思えないけど、喧嘩慣れしている感はあるな。
美咲泣いちゃった。
まあ、母親がいなくて姉妹二人だけじゃ何かと心細いよな。
そういう話ならウチの連中はよく分かる。
実際、寂しい思いをしているから弟妹はオレにしがみついて生きているわけで。
オレもこいつらがいないと何も手につかないし。
両側から強烈に睨まれているんですけど!
どうしたいの咲乃は!?
ああもう! 咲乃に勝てない。
この後飯を食べながら聞けと言われ、説教されながら食事をしました。
味なんか全然覚えていないよ。