Folge 95 ドッキングミッション
文字数 1,264文字
力が抜けて、背中が地面に着きたがっている。
それには賛成だ。
背中がひんやりとして気持ちいい。
どうも火照っていたようだ。
思いっきり想いを二人に伝えたもんな。
実は照れていたのかも。
はは。
自分の状態が分からない程鈍いらしい。
そんな風だから女子からモーションかけてくるんだよね。
オレから動かないんだもの。
今まで妹以外に女の子のことを考えたことが無かった。
白い目で見られていたから。
その中で現れたさくみさ。
姉妹で好きになってくれるなんてさ。
今まで白い目で見ていた女子に物申したくなるね。
……ちゃんと、好きになってくれる人がいますよーだ。
ああ。
目の前は空だ。
いつもより近いんだな。
空の青さが美人の白い顔に代わった。
長髪の先で頬を撫でられる。
くすぐったい。
でもされていたい。
そのままするのかと、待ち構えてしまう。
両手は左右に置かれているし、顔までは髪の長さ分程度の距離。
表情からしてもすると思うよ、これは。
綺麗な顔が降下を初める。
装備されているドッキングアダプター、通称――唇。
難なくこちらのアダプターとドッキングを成功させる。
人肌の温もりという乗組員が移動を試みる。
こちらの温もり乗組員が愛情という手を差し伸べアシスト。
移動を確認後、乗組員が入れ替わる。
ドッキングミッションの完了だ。
美しい顔は上昇し、元の位置へと帰還した。
クスクスと笑い合った。
ゲラゲラと笑い転げるよりも、気分がいい。
こんな楽しみを共有できるのは何故だろう。
やはり美咲だから……なのだろうな。
そう。
特別な感情を持ってさくみさとは接している。
知らぬ間にね。
特別な感情というものの正体。
これが愛情というものだと、もう一人の自分が囁いてくる。
片手を美咲の頬へ伸ばし触れる。
足りぬと言わんばかりに掌へ密着させてきた。
それを受け入れた証として、親指で撫でる。
オレの頬には美咲の目から嬉し涙というプレゼントが届けられた。
そう思ってもらえてこちらこそ良かったよ。
役に立てる人になれたようで。
これだけ気持ちを語り合うなんてね。
家族とは違う人と。
とても素敵な時間を過ごしている贅沢な奴だな。
――――罰が当たらないように頑張らないと。