Folge 41 キス、ハグ、キス
文字数 1,830文字
美咲は体中擦りつけてきている。
そりゃ嬉しいよ。
嬉しくないわけがないんだけどさ。
償うって。
そんなに悪い事していないよ?
確かに恐怖を感じなかったと言えば嘘になるけれど。
気持ちはひたすらオレへの好意だったわけでしょ。
嬉しいばかりなのに……。
ピタっと動きを止めてオレを見る。
泣きそうじゃないか。
これ、マジでオレがやらせているみたいで困っちゃうよ。
涙だけが動きを止めることが出来ずにオレの頬に一滴落ちる。
それをオレは親指で拭ってあげた。
ジッとして、真剣に聞いている。
いい子なんだよ。
行動を切り取ってみると驚くことも多いけどさ。
妹たちがとんでもないアタックしてくるのと変わらない。
それで慣れているのもあって、気づけばいい子にしか思えていない。
ちゃん付けは定着しているんだな。
呼び方はそんなに気にしないけど。
センスの無い裕二は許せないが。
えっと、美咲への気持ち、ね。
曇天から快晴に変わった空の様に。
青信号に変わった時の歩行者の様に。
自販機の下に百円玉を見つけた時の様に。
待て。
オレもセンス無かったわ。
まあいい。
とにかくだ。
美咲の表情がすっげえ綺麗になった。
やっぱ美人だな。
女の子からキスをされることがパターン化していないか!?
妹以外の子でもこのパターンになるなんて。
いや、女の子ってこういう風?
オレ、これしか知らないんだが。
んー。
止まらない。
また唇が腫れなきゃいいなあ。
結局何を言っても止めないんだな。
こういう時って、抵抗するものなのか?
でもなあ、嫌なわけじゃないし。
腫れるのが心配なぐらいで。
美咲の唇も大丈夫かな。
男は冷やかされて終わりだけど、女子はマズいんじゃないか?
美人が台無しになっちまう。
喋れないんだが。
仕方ない。
両手で顔を止める。
少し話して声を出せるようにさせてもらった。
嬉しそうな顔しちゃって。
今まで知らないってどれだけ周りに興味無いんだよ。
その分、オレへの興味が強烈なのかな。
なんだか可愛くなってきた。
止めていた顔を下ろし、片頬を付けるようにする。
背中へ両腕を回してギュっとハグをした。
ただハグをするだけ。
でも心臓の鼓動を感じるから、色んな意味で近づけた気がする。
いいね。
こういう時間が好きだ。
なんだ、美咲ともこういう時間を作れるじゃないか。
これでいいんだよ、これで。
からのキス。
初日とは思えない程近づけたな。
ツィスカの提案は心配しかなかったけど、ありがたかったかも。
そういえば、あいつらはドアの前にいるのかな。
勝手に入って来るからそれまでは好きなように二人の時間を満喫だ。