第58話

文字数 702文字


 黄月は水に包まれて動きがとれない。
 文友が近づいて行って、狸の体を押し込んで水の中に入る。
「(邪魔すんじゃねえ)」
 黄月が助けに来る文友に文句を言う。
「(これは、先祖の因縁はどうでもいいんじゃなかったっけ?)」
 文友が手振りで答えを返す。
 水の中なのになぜか意思疎通ができている。
 文友の行動に黄月がためらっている。
やがて、決意したようで黄月が文友の手を取る。
「僕らは水虎たちを倒そう」
 白雲がナツに促してくる。
 二人は水虎と背後にいる大ドクロに向かっていく。
因縁の対決に横やりを入れるのは無粋かもしれない。
だが、黄月は初めに、先祖の因縁など振り払うつもりでいた。
 ならば、この戦いも因縁の対決とは違うとも言える。
白雲が大ドクロに毛を伸ばして縛り上げる。
ナツは指で印を描いて、封印術の準備をする。
水虎がナツたちの加勢に慌てて、水術を維持するのをやめて逃げ道を探す。
だが、水虎が逃げるよりも先にナツの封印が完成する。
 水虎が石ころに吸い込まれていく。
 黄月が水の塊から解放されて、せき込んでいた。
「すまんな。戦いの邪魔をしてしまった」
「気にすんな」
 黄月が短く、はっきりとナツに答えた。
「いいかげんにごちゃごちゃと面倒くさくなってきたところだ。ちょうどよかったぜ」
 今までと違って、すっきりした口調で黄月が言う。
「さて、こっちのごちゃごちゃも片づけないとねえ」
白雲が黄月に声をかける。
 大ドクロは白雲の伸ばした毛に巻き付かれたままだ。
 今にも戒めの体毛を引きちぎりそうだ。
「さて、あっちを片づけるか」
 全員が大ドクロに立ち向かう。




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