第74話

文字数 618文字


引っ越しで集まった妖怪たちは、まだとどまっていた。
 玄関先の出来事をナツから聞くと妖怪たちは留まることを決めた。
鬼たちの一方的なやり方に腹が立った、らしい。
 ともあれ、ナツにとっては妖怪との戦いなど初めてなのでありがたかった。
「近くにいる妖怪たちに呼びかけるのはどうだろうか?」
「その連中は、様子を見たがるようなのばかりだからねえ」
「ここにいる者どもでは数が少ない。神社に行ってみては?」
「神社の妖怪たちは説得が難しいからねえ」
 居間に集まった妖怪たちに白雲が答えている。
 ここを移動しようという意見も出ている。
「神社の勢力は人間に対して好意的なはずだ」
「でも、私利私欲の人間には冷たいよ?」
「これは欲望のための戦いではないと思うが」
 河童の三郎太の意見に、朱音が返答に詰まる。
 聞いているだけのナツを横目に見る。
「どのみち暗くなっているから、移動は無理だよ」
 夜は妖怪たちの時間なので移動しないほうがいいらしい。
「とりあえずは、ここにいる妖怪でナツを守るしかありませんな」
 鬼たちの挑戦に対する方針が決まった。
「人数的な心配がありますが、それは」
 他の妖怪が指摘した。
 その意見に対して皆、黙り込む。
 人数を増やしたくても、妖怪の召喚にはリスクがある。
「いざとなれば召喚すればいい」
 それでもナツは断言する。
「大丈夫?」
 心配して朱音が聞いてくる。
「平気だ。どのみち、俺の命も狙われているからな」
 あの鬼たちは本の持ち主を狙っている。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み