第88話
文字数 355文字
ナツの指示を受けて去っていく鬼たちを、黄月も眺めていた。
「不満かな?」
鬼を見逃している黄月に、白雲が尋ねる。
「そんなことねえ、余計な運動しなくて清々しているとこだ」
「けれども、本の力に妖怪が屈服したことについては?」
「ふん。正しく使ってくれれば、問題ねえさ」
黄月の言葉に反応したナツは手の中の本を見つめる。
「正しく使えていたか?」
「及第点だな」
「厳しいな」
「あれは、褒めてるんだよ」
白雲が黄月の感情を訳してくれた。
黄月は、ナツのやり方にとりあえず納得したようだった。
「力が欲しい時は、いつもで呼んでくれ」
そう言って、黄月も去っていった。
ナツと白雲たちは黄月の背中を見送った。
「おやおや、片づけをしないで逃げたようですな」
その姿が見えなくなってから、妖怪の誰かが言った。
暴れた屋敷の後片付けが残っていた。