第87話
文字数 491文字
「自分の命と引き換えに、仲間を許してやってくれ」
「虫のいいことを」黄月
「口出しはやめておこうよ」白雲
「許すとか、許さないとか言われてもわからん」ナツ
鬼たちからは絶望的な雰囲気が漂っている。
さっきまでの怒りとは逆に、肩を落としてため息をついている。
鬼たちは、自分たちが皆殺しにされる、と考えているらしい。
ナツの本はだいぶ嫌われているようだ。
考えすぎのような気がしないでもない。
ここで起きたことは殺し合いには違いないが。
「どういうことなんだ?」
ナツは白雲に聞く。
「本の持ち主が今までやってきたことだからねえ」
「今まで通りになんて、できないだろう」
「そうだねえ、ナツにはどうするかを選ぶことができるねえ」
「生き死にを決めろ、というのか」
「本を持っている奴には逆らえねえな」
黄月が皮肉たっぷりの言葉を吐いた。
ナツは手に持つ本を眺める。
この本は妖怪を支配できるというが。
支配できるのなら恐いものなどないであろう。
だが、本がなくなったらどうなるのだ?
ナツはすこしだけ考えた。
やるべきことが決まった。
「許すから立ち去れ」
言った後で、人を襲わないように、と付け加えるのも忘れない。