第69話
文字数 555文字
玄関を離れて部屋に向かってナツと白雲は戻る。
「妖怪は普段どんな生活をしているんだ?」
「突然だねえ」
「料理を持ってきたからな」
「料理ぐらいするさ」
「まあ確かに、それぐらいはするな」
人間並みの知性と手の器用さがあれば、料理はするだろう。
「妖怪にもよるけれど、人の間で生活しているねえ」
そう言って白雲は人間のような指先をナツに見せる。
「そうでない者は、山とか森で暮らしているねえ」
白雲の視線の先には、ナツが召喚した動物型妖怪たちの姿がある。
「まあ、色々いるから」
「人間と同じ料理を食べて、同じように服を着て、同じ姿になったり」
「人間にばれないのか?」
「人間への変身が? そう簡単にはばれないよ」
「年がら年中、妖怪の変身を疑っているわけじゃあないからねえ」
廊下の途中で白雲が立ち止まった。
「無理に人間の生活をしたらストレスが溜まりそうだな」
「そういう妖怪もいるねえ」
「その妖怪にとって不便があったら人間世界を去っていくだろうねえ」
「何かに縛られているわけではないのだな」
「その気になれば、どこででも暮らしていけるからねえ」
「変身できるならどうにでもなるな」
「それでも人間の中で生きていくのだな」
「そうだねえ、それに加えて人間のことが好きだからというのもあるねえ」
部屋に戻ろうとしたときに玄関から声が聞こえた。