第49話

文字数 781文字


「面倒なことに巻き込んじまったな」
黄月は思う所があるのか仲間たちの心配をした。
いつもだったらば、俺は知らん、で済ますはずだ。
「俺にだって、こだわりはある」
「ケンカのこだわり?」
 白雲が茶々を入れてくる。
「そうだ。理由もなしにケンカを売られるのは性に合わん」
「しょうがないさ、誰にもわからないことだから」
 ナツが穏やかに言って流そうとする。
「水虎の言った通りに、黄月の先祖の話になるねえ」
「先祖か・・・まあ、一族はまだ生きているからな」
「天涯孤独ってわけじゃないんだ」
「まあな。俺が昔を話さないだけでまだ一族の連中はピンピンしているぞ」
「一族の狐たちがどんな感想を抱くか、聞いてみたいところではあるが」
「色々とねえ」
 ナツと白雲が興味を持ち始める。
黄月のような荒くれ者を生み出した狐たちはどんな妖怪たちなのだろうか?
「そうなると、故郷か血族の元に行って確かめてみることになるねえ?」
 白雲の言葉に黄月が悩み始める。
 風来坊の黄月にしては珍しい態度だ。
「そんな必要はねえ、どうせ相手の狙いは俺だ」
「オレたちは、だろ?」
 いきなり誰かの声が場に入ってきた。
 声の主を探すと、黄月の足元に小さな狸がいた。
 狸は二足歩行で黄月の腰までしか高さがない。
「深刻そうなことで話し合っているじゃないか」
小さな体とは裏腹に生意気な口ぶりだ。
子供のように高くて元気な声だ。
「文友、どこから来た」
「そりゃ、玄関からさ」
 文友は化け狸の妖怪だ。
 狸は通常丸まった体をしているが、文友は犬のように痩せている。
 この狸もナツの屋敷に出入りする妖怪のひとりだ。
「痩せダヌキめ、俺たちは深刻な話なんてしてねえ」
 黄月の発言を聞いて、ナツは自分の頬を指で掻いた。
 さっきまで珍しいぐらいに悩んでいたのだが、手のひらを返した。
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