第85話

文字数 458文字


「本を捨てろ!」
「逃げて!」
「やかましい! 痛たっ!」
 朱音が自分を捕まえている鬼の腕にかみついている。
 こんな状況でもナツは家族について考えていた。
 ナツの兄は家族のことを大切に思っていた。
 その気持ちは果たせずに亡くなった。
 気持ちを受け継ぐ。
 継承とはそういうもの。
 ナツは本から力のようなものが溢れてきているのを感じ取った。
 見ると手に持っていた本から光が出ていた。
「そんな。まさか!」
 さっきまで猛々しかった鬼は、ナツの本の様子を見て、驚いている。
 本の力が手に集まり、輝く剣が生み出された。
 ナツはそれが霊力で作られた剣であることを本から教えられる。
 何度か振ってみて、剣の感触をナツは確かめる。
 鬼は完全に怯えていた。
 人質を捨てて、がむしゃらに突っ込んでくる。
 向かってきた鬼に対して、ナツは剣を一振りする。
 鬼の体に切り傷が付けられる。
 傷に苦しんだ鬼は逃げ出した。
 ナツは逃げる鬼を放っておいて、倒れた朱音を助け起こす。
「ケガはないか?」
「ううん、だいじょ~ぶ」
「さて、白雲たちを助けに行こうか」

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