第47話

文字数 754文字


2章

「なんだ? ずいぶんボロボロだな」
やってきた黄月を見たナツの第一声である。
「俺はいつでも見た目にこだわっているぜ?」
 そう言ってナツの目の前の狐はアピールをした。
「そうか? 雑草の中を転がってきたみたいだぞ?」
「気のせいだぜ」
黄月の体のあちこちに雑草が付いている。
雑草に気付いた黄月がそれを指でつまんで捨てる。
黄月は化け狐である。
年齢は、100歳以上である。
本人が大雑把なので、正確な年齢は誰も覚えていない。
すくなくとも、人間であるナツよりは年上であった。
妖怪狐らしく、二つの尻尾が生えている。
「そこで知らない野郎とケンカになった」
「逃げたわけじゃないだろうな?」
「バカいえ、このオレが逃げると思うか?」
荒げた声で黄月が言い返す。
二本足で立つ狐の黄月は成人男性のナツと同じぐらいの背丈である。
玄関が広いとはいっても大人二人が占領していると手狭になる。
「いきなり襲い掛かってきてな」
「相手は妖怪だったのか?」
「そうだ」
「それは大変だねえ」
 いったん屋敷の奥に引っ込んだ白雲が戻ってきて会話に参加した。
 ナツと白雲は視線を交わした。
 なんとなく暴れて行った水虎がその襲撃者なのではないか?
「それはそうと、こっちは何があった? 水浸しのようだが」
 屋敷の庭先は水虎が水をばら撒いたまままだ。
「こっちもこっちで妖怪がトラブルを持ち込んでな」
ナツは水虎が暴れたことを話す。
「そういうわけで、屋敷がぶっこわされそうだったんだよ」
「白雲、それは言い過ぎだ」
「でも、追い払ったからいいようなものの」
「ごろつきの妖怪は手加減が効かないからな」
 黄月が自分を棚に上げて水虎の所業を批判する。
「水虎については思い出せねえな。ひっかかりはあるんだが」
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