第89話

文字数 470文字


ナツたちは後片付けをしていた。
夜が明けてしまった。
朝日がナツの目を照らしていて、まぶしい。
夜中の戦闘で、屋敷も荒れ放題だった。
後片付けまでが戦い、などと白雲が言う。
「おはよう」
 そのように声をかけられた。
 声の主は、昨日の狸姉弟だった。
 確か名前は、姉の酒匂と弟の文友だったはず。
 ナツに気配を感じさせずに、来ていた。
 様子でも見に来たのだろうか。
「派手にやったねえ」
「穏やかに済ませるつもりだった」
「しょうがないさ、荒っぽい妖怪相手じゃこうなるさ」
 姉の酒匂は散らかった敷地内をメガネ越しに眺める。
「終わったら私たちの店に来ないかい?」
 酒匂の唐突な申し出だ。
 昨日までならナツは警戒するところだ。
 しかし、状況が変わった
 妖怪も家族同然の仲になった。
 白雲がナツにうなずく。
「申し出を受けるよ」
 ナツの返答に狸たちは満足した。
「言っただろ? この人は、ナツは、受け入れるって」
「ふっきれたみたいだねえ」
「人間は成長していくもんだよ」
「何を偉そうに、こいつめ」
 姉が弟を小突く。
 狸姉弟のやりとりも、ナツは日常に見えていった。

 
 END 
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