第44話

文字数 738文字


「こっちに黄月という狐はいるかね?」
ナツと白雲が玄関に出ると全身鱗だらけの妖怪が来ていた。
人型ではあるが、河童とは違って甲羅も皿も付いていない。
西洋の半魚人のようにも見える。
 そもそも、彼のようにナツの屋敷を訪問する妖怪がいる。
客であったり、事件解決の依頼に来たりする。
旧知を温めに、屋敷にいる妖怪を訪ねて来るものもいる。
「黄月というと?」
「とぼけても無駄だ。やつがここにいることはわかっている」
「とぼけるつもりなんてないぞ」
 ナツが反論するが相手の態度は微動だにしない。
「同姓同名の別人ということもあるからな」
「ふん」
「黄金色の毛並みで、尾が二つあって」
 半魚人な妖怪が黄月の特徴を挙げる。
「化け狐の標準的な特徴だけではな」
「態度が悪い奴だ。柄も悪いと来ている。そう聞いている」
なんだ、直接会っているわけではないのか。
ナツは肩透かしを食らった気持だった。
だが、黄月の性格的欠点を述べられて内心苦笑した。
「なぜ彼を訪ねに来た?」
ナツは黄月を訪ねてきたことに不安を感じる。
黄月には世間に敵が少なくない。
 半魚人妖怪は決まりが悪そうにしている。
 どうやら言い出しづらいことがあるらしい。
黄月は化け狐である。
ナツの屋敷に居候になっている狐の妖怪だ。
普段は屋敷で寝ているか、どこかを放浪したりしている。
態度が悪く、ケンカをする風来坊で、あちこちで嫌われていたりもする。
ナツの隣にいた白雲が話す。
「あいにくとねえ、本人はいないんだよ」
ナツに代わって白雲がヒゲをいじりながら答える。
「僕がいないことを保証するさ」
「保証って、この妖怪に通じるのかい?」
感情的な問題、と白雲は捉えたようだが。
それで相手は納得するかな?
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