第54話

文字数 484文字


「いえ、一緒にいた天狗火の奴は捕まっちまったみたいで、姿が見えねえです」
天狗火はこれを見ると病気になるといわれる怪火である。
この地方の天狗火は、翼が生えているとも言われる。
「火の妖怪を?」
「水の妖怪がいるならねえ」
「それに、デカいほうは怪しげな術を使っているのを見たんで」
「術を使うなら簡単に生け捕りにできるねえ」
「術が終わる前に俺は逃げたんで運が良かった」
「棲家には当分戻れないな」
「もう一度来るかもしれねえな、お前さんを狙って」
ノブスマが嫌そうな顔をして黄月を見る。
「神社か、寺のほうに身を寄せますよ」
「その方がいい」
「オレが一緒に行ってオヤジに説明してあげるよ」
文友が口利きを買って出た。
寺には文友の父親がいる。
かつてはこの地方で悪名をとどろかせた狸妖怪だったとかだ。
 今は戦いに飽きたのか住職をやっている。
「もしも、因縁があるのならば、自らの手で、どうにかして欲しいもんですな」
「相手の目的もまだわかりきっていないから」
「そうかもしれませんが、このような感情に先走った暴力には、とばっちりをくらうもんですぞ」




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み