第51話

文字数 710文字


3章

「妖怪たちがさらわれている。すでに三人目じゃ」
神社で巫女姿の少女が待っていた。
見た目は小学生ぐらいだが、彼女は立派な妖怪である。
黄月よりも年上で、この地方の妖怪たちの顔役をしている。
そのためか年寄り臭い言葉遣いをしている。
「さらわれているのは確かなのかねえ?」
「理由もなくいなくなっている」
「気まぐれで旅に出たのかもねえ」
「そうかもしれん」
 見た目とは裏腹に落ち着いて答える。
「杉野みたいに、怪しい術でかくれんぼしているとか」
文友が横やりを入れる。
「それもあるかしれん。だが、わしはかくれんぼなぞしないぞ」
 巫女姿の杉野は文友の言葉にも平然と答える。
 杉野がいる神社は年代もので古い。
そこに真新しい巫女服の少女がいるので、神秘的で違和感のある風景だ。
「確かなことはあるのか?」
「知り合いの妖怪たちによると、いなくなるような素振りはなかったらしいのう」
「突然いなくなったのか」
 事件を掘り下げると不可解なことが出てくる。
 このもやがかかったような感覚が、妖怪が絡む事件というものである。

「そこでお前たちにいなくなった妖怪を探して欲しいのじゃ」
妖怪絡みのトラブルはナツたちの担当である。
いつのまにかそうなっている。
世の中はそんなもんだ。
「連続して起きているから事件性があるねえ」
 白雲がのんびりした口調で指摘する。

「俺は自分の用事があるから抜けるぜ」
 黄月がこの場に背を向けて離れようとした。
「おいおい、消えた妖怪がどうなってもいいのかよ」
「大げさだろ」
 黄月はかたくなで振り向きもしない。
「わしは強制などできるものではないが」
「御冗談を」

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