第84話

文字数 515文字



「どうやら裏から屋敷に侵入しているらしい」
「そうだね、他へ行こうか」
「隠れるのもいいが」
「う~ん、でも逃がせって言ってたし、無理して欲しくないよ」
 廊下の陰からのぞいたら、鬼が探しているのが見えた。
 奴らは、屋敷に入って、背後から攻撃するつもりらしい。
 ナツの横にいる朱音が逃がすために導いてくれる。
「大丈夫だって、わたしが必ず逃がしてあげるって」
 自信満々に朱音が答える。
 この根拠のない自信はどこから来るのだろうか、とナツは思う。
「どうしたの?」
「何でもない。それよりも白雲の言ったとおりにしなくていいのでは?」
 ナツの言葉に朱音が振り返る。
「ま、あんなんでも家族で兄妹だからね」
「いつも正しいというわけでは」
「そうだよ~、でも兄貴なんてそんなもんだよ」
「そんなもんか」
 ナツは自分の兄と本気で向き合ったことなどなかった。
「家族っていうなら、ナツのことだってそうだよ?」
「そこまで仲良いわけでは」
「付き合いの長さよりも、家族としてやってけるかってこと」
 自分の言葉に満足して、朱音は何度もうなずく。
「わたしは、そう思うけどね」
「ここか!!」
 背後から声が聞こえて、鬼に見つかった。
 行動する暇もなく、朱音がはがいじめにされた。

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