第21話

文字数 746文字

 「なかなかの威力だな」
 黄月がうめくように言う。
 ナツは威嚇するために手に持った剣を投げつける。
 鬼熊は投げつけられた霊力の剣を手ではじいた。
 「ずいぶんと力のある妖怪みたいだな」
 ナツは感心する言葉を言いながら新たな霊力の剣を手に生み出す。
 内心では手ごわい相手と認めなければならなかった。
 黄月が鬼熊の背後から飛びかかり、肩のあたりに爪を突き刺す。
 鬼熊は器用に手で背中にいる黄月をつかんで投げ飛ばす。
 たいした威力でもなかったことを示すように、手で体をかいて見せた。
 「余裕を見せつけているな」
 鬼熊の態度を見てナツが顔をしかめる。
 「ちくしょう、バカにしてやがる」
 ナツの隣に投げ飛ばされてきた黄月が悔しそうに吐き捨てる。
 鬼熊は二本足で立つのをやめて、四本足で地面に立つ。
 何をするつもりだろうか、とナツは思ったが、すぐに戦闘態勢であると直感した。
 「よけろ! 黄月!」
 ナツが怒鳴って、今いる場所から離れる。
 黄月も横に身を投げ出して転がる。
 さっきまで居た場所に、猛スピードで鬼熊が突進してきた。
 通過した鬼熊はそのまま他の大木にぶつかり、その大木は音をたてながら折れる。
 「くそっ、ぶつかったら森の外までふっとぶぞ!」
 黄月が大げさなぐらいに驚きの声を上げた。
 鬼熊は体当たりしようとして、走って回り込んでくる。
 黄月が近寄ってきてナツに話しかける。
 「逃げ回ってばかりいられないぜ?」
 話している間も鬼熊に突進されないように正面に立つのを避けている。
 「スピードとパワーはすごいけれど、動きは直進的だ」
 ナツは霊力で剣を形作るのをやめて、鎖を形成する。
 「いいぜ、やってやるぜ」
 霊力の鎖を見て黄月が勢いづく。
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