第83話
文字数 340文字
「何とかしないといけないな」
「もしものことがあったら困るねえ」
「そんなことを言うなよ」
「でも、君さえ無事でいるならどうにかなるよ」
白雲はそういうが、ここで皆に死なれたら後味が悪い。
短い付き合いとは言え、身内の死をこれからずっと背負っていくことになる。
「本を使って戦うことはできないのか?」
「できなくもないけど、教える暇がなかったからねえ」
鬼のひとりがナツの場所まで飛び込んできた。
ナツが避けるよりも先に白雲が行動する。
白雲は体毛を伸ばして鬼の首に巻き付ける。
「ともかく、君は本に選ばれたわけだからなんとかできるよ」
「そうは言われても」
「でも、今は逃げた方がいい」
「見捨てて逃げるわけにはいかない」
「大丈夫、僕らのほうは適当に逃げるから」
白雲がいつもと変わらない口調で言った。