第32話

文字数 704文字

 「結局、何がどうなっているのやら」
 報告を受けて戻ってきた文友が言う。
 「こっちが聞きてえぜ」
 黄月が文友に反論する。
 ナツたちは佐久間教師を神社まで運んだ。
 神社には仲間の妖怪がいるし、何よりも女性同士のほうがいい、という判断からであった。
 佐久間教師は別室で寝かされている。
 「佐久間教師の話では、今まで何も起こらなかったわけだよねえ?」
 白雲が最初の疑問点を指摘した。
 ナツたちは教師が寝かされている神社の離れ――の外で話し合っていた。
 「話によれば、森に入ったけど何も起きていないらしい」
 「なんで今になって突然?」
 文友の言葉にナツは肩をすくめるしかない。
 「忘れていたことを思い出したとか?」
 文友が狸の指を回しながら言う。
 もはや、誰も人間の姿をとっていない。
 河童の三郎太の治療を受けたときと、神社に運んだ時に、妖怪としての姿を見られているからだ。
 「もし、そうなら単に森の中に入っただけで襲われたことになるぞ?」
 文友の言葉に黄月が反論を言う。
 「ナツたちも森に入ったわけだしねえ」
 白雲がやんわりと否定する。
 杉野が離れの部屋から出てきた。
 杉野は小学生ぐらいの巫女姿をしている。
 「おぬしら、そろいもそろって」
 年寄りくさい言葉遣いで杉野がぼやいた。
 この巫女は見た目通りの年齢ではない。
 黄月たちと同じ妖怪でかなり年上だ。
 「まだ、事件は始まったばかりでえ」
 黄月が歯をむき出しにして意地を張る。
 「実は言っていないことがあって」
 いつの間にか佐久間教師が部屋から出て来た。
 肩のあたりを包帯で巻いているのが痛々しい。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み