第45話

文字数 735文字


「いいや、ここにいるはずだ」
ナツたちの思惑どおりに信じなかった。
彼は水虎だ、と白雲がささやく。
水虎は河童のように河川に住む妖怪だ。
河童のように皿と甲羅を持つが、ユーモアな性格をしているわけではない。
「隠すというのならばこちらにも考えがある」
水虎が玄関に体を入れようとしてきた。
無理やり屋敷の中に入るつもりだ。
ナツは不快に思った。
いくら身内に問題があったとしても、そこまで許すつもりはない。
「本人が来るまでここで待っていたらどうか?」
 ナツは穏便に済ませようと提案をする。
「ふざけるな!」
水虎がナツたちに怒鳴り返す。
「挑発しないほうがいいよ」
「そのつもりではなかったんだが」
 白雲の注意にナツが答える。
 水虎が玄関から離れて、ナツたちと距離をとって戦闘態勢をとる。
白雲がナツの前に出て水虎と戦い始める。
化け猫の白雲が体の毛を長く伸ばして水虎に向かわせる。
絡めとろうと伸びていく白毛は白波の川のようである。
「俺を甘く見るなよ?」
そう言って、水虎は口から大量の水を吐き出して壁を作り出した。
ナツは水の質量と衝撃がコンクリートのように固くなることを思い出した。
 白雲の妖術はうまくいかないかもしれない。
ナツの推測どおり、白雲の毛は水壁に当たって萎えてしまう。
「まだまだ」
 術が破られても白雲の自信は壊れない。
 白雲が毛を針のように固くして水虎に向かって放つ。
その毛針は山なりになって水壁を飛び越えていく。
「ほう」
それを見て、応用の技に感心した様子だった。
対して、水虎は水壁を屋根のように移動させる。
毛針の雨が降り注いだが、水壁はそれを防いだ。
「この程度か」
 水虎はそう言ったが、その言葉に白雲は動じない。
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