第60話

文字数 768文字


大ドクロはナツによって封印された。
ドクロは力を増すために妖怪を誘拐していたということだ。
どんな儀式で力を増強しようとしていたのかはまだわからない。
ともあれ事件は解決した。
水虎は、ナツたちに倒されておとなしくなってしまった。
黄月が絶体絶命であっても、考えを曲げなかったのが効いたらしい。
因縁についても今の黄月には関係ないことだ、とナツからも説明した。
だが気落ちしてしまって、水虎は気力も湧いてこない状態だった。
 こうして黄月のトラブルも解決した。
「それはそうと、文友はどこへ行った?」
「外にいたはずだよ。ナツのガラクタに興味があるらしい」
「あいつめ」
 黄月が部屋の外に出て行った。
 白雲はそんな黄月の背中を見送った後、ナツに聞いてきた。
「遺産と言えば、ナツのものはどうするの?」
ナツはガラクタのことを忘れていた。
「思い出してあげないとねえ」
「忘れたままのほうが良かったな」
「あれは、引き取る」
「思い出のために?」
 ナツは目をつぶって過去に思いをめぐらせる。
 兄が健在だった日々、うれしいこと、悲しいこと。
 けれども、記憶が日々薄れていくのを今も感じる。
 目を開いて過去の思い出からナツは戻ってくる。
「思い出は物に宿るものではないだろ?」
「そうかもしれないねえ」
「でも、物が残ってないときのことだよねえ。物に依らないってのは」
「むむむ」
「捨てるとか考えてるわけじゃないぞ。心の部分も考えてる」
「ふむふむ」
「引き取るのは、黄月のものほど厄介でないからだ」
 言い訳である、しかし、心も言葉も形のままではない。
上から黄月の怒鳴り声が聞こえてきた。
どうやら、文友がなんかやらかしたらしい。あるいは、黄月をからかったのか。
「なるほど」
白雲がナツの答えに満足する。

END


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み