第86話
文字数 483文字
ナツの姿を見て、鬼たちは降伏を宣言した。
「本当にこれで終わったのか?」
「終わったよ」
「本当に?」
「見て、まだ戦う気持ちを持っている奴なんていないよ?」
白雲の言うとおりで、鬼たちは武器を捨てて、戦う意思を捨てていた。
本の力は知られているらしく、動揺が鬼たちに漂っている。
だが、一番大きな鬼が、武器を捨てていない。
そのせいで現場に緊張感が残っている。
「もう、十分だろ?」
黄月がその鬼に降参することを促した。
武器を捨てていない鬼が走り出した。
ナツを襲うために、向かってくる。
「よせ! もう終わったんだ!」
鬼のリーダーが制止する声を上げた。
しかし、耳に入っていないらしく、勢いは止まらない。
今のナツは負ける気がしない。
本の霊力と術はあらゆる妖怪に対抗する力をナツに与えてくれた。
ナツは武器を振りかぶる鬼よりも速く動いた。
予想外の動きに鬼が驚き、目で追おうとする。
鬼が反応するよりも先にナツが手に持った剣で腕に切りつける。
大剣を握った腕は、ナツの剣によって切られて地面に落ちた。
「ダメだ」
襲ってきた鬼は観念して言い捨てる。
場は完全に静まった。