第19話

文字数 1,146文字

 外に出て倉多を家まで送り出すことに決めた。
 倉多につきまとう脅威が何なのかまだわからないからだ。
 外の乾いた空気がナツの腕を触っていく。
 「とりあえず、誰かを護衛に付けよう」
 「は~い、わたしがやる」
 朱音が護衛を買って出た。
 この白雲の妹は活動的な服装をしている。
 赤茶色の髪の毛に柔らかそうな猫耳が出ていて、本人は隠そうともしない。
 文友が疑わしげに朱音を見る。
 「大丈夫かいな?」
 朱音がムッとする。
 「疑うつもり?」
 朱音の頭にある猫耳がとがる。
 「そうじゃないけれど」
 文友が肩をすくめて言いよどむ。
 彼が心配しているのは実力に対しての不安である。
 ここにいる妖怪では白雲と黄月が一番強い。
 「女同士のほうが安心するだろう」
 ナツは朱音が護衛に適している理由を言う。
 文友もうなずいて納得した。
 「任せといて」
 朱音が元気よく返事をする。
 ナツは朱音にうなずいて、他の仲間たちを見回す。
 「残りの者は周辺を調査して相手の正体を突き止めよう」
 他の者がナツの意見に同意する。
 ナツは、朱音と倉多が会話しているのを確認する。
 二人から距離を置いて、白雲たちと小さい声で相談を始める。
 「彼女からもっと聞き出したほうがいいんじゃない?」
 文友が小さな声で提案してくる。
 ナツも同じ考えで、それを相談するために頭をつつき合わせている。
 「無理やり話を聞き出せるのならいいけれど」
 ナツは眉間にしわがよるのを感じた。
 「強引にやっても、印象が悪くなるだけだぜ?」
 ぶっきらぼうに言った黄月は口の端をゆがめる。
 「話すのを待つのはいいとして、被害が出てからでは遅いかもねえ」
 白雲がのんびりとどっちかずの意見を言う。

 ナツの住まいは森の中の一軒家である。
 森と家のどちらも、見た目はありふれている。
 「あれれ?」
 「どうした?」
 「あそこになんかいるよ?」
 文友が指さす方向に毛むくじゃらの獣がいた。
 その獣は茂みに隠れていて、倉多の言った通り毛むくじゃらで熊のように見える。
 「あれがそうです」
 倉多が怯えた声で指摘する。
 「上等だぜ、かかってきやがれ!」
 怒鳴りながら黄月が向かっていく。
 熊のような獣は動いたかと思うと、背を向けて逃げ出す。
 「待ちやがれ!」
 黄月は化け狐に変身して後を追いかける。
 化け狐の姿を見た倉多は驚いて声が出なくなっている。
 「あちゃー」
 黄月の変身を見た文友が呆れた声を上げる。
 ナツとしては黄月を一人で行動させるわけにはいかない。
 「とりあえず説明をしておいてくれ」
 朱音たちに妖怪であることの説明を頼んだ。
 ナツは急いで黄月の後を追う。

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