第78話
文字数 608文字
屋敷を警備する妖怪たちの話声が聞こえる。
「襲撃に対しての対策だから、でもわたしは不安。ナツは?」
「俺も不安だ。こういうことは初めてだからな」
「しかたがないよ」
立ち話ばかりなので、二人で歩き始める。
廊下にはまだ取れていないホコリの臭いが漂っている。
「わたしが戦うのは好奇心のため」
「人間への好奇心か?」
「そう。いつも何にでも興味を持つけれど」
「俺にも好奇心が湧いているわけだ」
「そうだよ~。 それで兄貴に何が不満なの?」
会話の内容が朱音のことから白雲のことに変わる。
そらされたような気もするが。
「この一件に関して、白雲は感情移入しているみたいだ」
「そうだね~、熱心だよね兄貴にしては」
「同じことを感じているな」
「でも、兄貴だって、そんなにわたしと歳は離れていないから」
「じゃあ、人間の兄弟と感覚は同じだな」
「20年ぐらいなら、妖怪と人間の精神は変わらないみたい」
立てた人差し指を回しながら朱音が言う。
「それで白雲の手助けはありがたいのだが、朱音はわかるか?」
「わからなくもないけど、教えない」
笑顔で朱音が答える。
イジワルから言っているわけではないようだ。
彼女には思うところがあるのだろう。
「本人から聞いたほうがいいよ」
「そうだな」
「話すことは大事」
まったくもって朱音の言う通りだ。
それに、ナツはいつも直接話し合う人生を送ってきた。
真実を確かめてきた。
わだかまりの解消のために白雲と話すことにしよう。