第75話

文字数 598文字


「しかし、戦力が足らないねえ」
 妖怪たちを見回した白雲が言う。
「いやいや、そんなことはないですぞ」
 何かを悟った河童の三郎太が反論する。
 どうやら、ナツの知らない何かがあるらしい。
「黄月を呼び出すつもりなのでしょうが、あいつは厄介者ですぞ?」
「僕はそうは思わないけどねえ」
ナツの目にはっきりとわかるぐらい、三郎太は嫌がっている。
 どうやら、黄月というのは妖怪たちの間では嫌われているらしい。
「黄月がいると役に立つけれどねえ」
 ナツのほうを見ながら、白雲が言う。
「黄月も妖怪か」
「黄月は鼻が効くし、頼みになるよ。こういうときは」
後半の言葉はすこしだけ間があった。
「召喚しよう、戦力は必要だ」
 他の妖怪たちはどこまでナツに従うかわからない。
 だが、白雲がそこまで言うのならば召喚してもいい。
 ナツが本を使って召喚行動をとると、周囲の妖怪たちは妙な緊張感を持ち始めた。
「よう、大勢そろっているな」
 召喚した先には黄金色の狐がいた。
傷だらけの体は人間ほどの大きさである。
来なければいいのに、と誰かが文句を言い出す。
文句を言い出した方向を、黄月がにらみつける。
「彼が化け狐の黄月だよ」
臭いを嗅いでいる化け狐を、白雲が紹介した。
「白雲か、力仕事は俺には向いていないぜ?」
「必要としているのは力じゃないからねえ」
白雲の言葉に黄月が口の端をゆがめて答える。
この柄の悪い態度を、妖怪たちは嫌っているのかもしれない。

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