第35話

文字数 516文字

 「佐久間教師のことは知ってるか?」
 ナツが佐久間教師について聞いてみる。
 「知っているわな。昔、社を壊して逃げたチビ助だわ」
 ナツはチビ助という単語に眉をひそめる。
 佐久間教師は女性にしては背が高いからだ。
 「そのときは小さい体だった」
 佐久間教師が照れ臭そうに話す。
 「うむ、ずいぶん育ったんだわ」
 「そのときは申し訳ないことをしました」
 佐久間教師が丁寧に昔のことを謝罪する。
 変われば変わるものだ。
 「驚かしたことはあるが、それ以外のことはしないぞ? もちろん人をケガなどさせることなどはしておらん」
 杉野が鬼熊の言葉に同意する。
 「どうやら昔から人を害さない、というのは本当のようだ」
 ナツは鬼熊の事実を認めないといけない。
 「じゃあ、何が起きているんだ?」
 文友が両手でお手上げとでも言うような反応を見せる。
 森に入っても、社にいたずらをしても、佐久間には何も起きなかった。
 倉多には起きた、そして鬼熊女は無関係。
 鬼熊が咳ばらいをした。
 「そうそう、この森には他にも妖怪がおってな」
 「それを先に言え」
 黄月が低い声で言った。
 彼でなくても仲間はみんな同じ考えだろう。

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