第81話

文字数 641文字


笛の音は屋敷だけでなくその周囲に広く響いていた。
音が終わり、静寂が戻ってくる。
間を置かずに完全な暗闇になった林の奥から、鬼たちが出てきた。
集まってきた鬼たちは30人を超えているように見えた。
ほとんどの鬼は戦国時代に使うような鎧姿をしている。
少数の者は人間のものと同じ着物を着ている。
このグループにはおとぎ話に出てくるような半裸の鬼はいない。
ナツたちの背後の屋敷からも妖怪たちが出てくる。
白雲兄妹の姿を探して見回した。
彼らは味方の妖怪たちの先頭にいた。
「ともかく本をもっている奴を倒せ!」
「一方的だ、納得できないぞ」
ナツを指さす鬼たちとの会話は通じなかった。
「本は我々を支配する、滅ぼさなくてはならない」
「聞く耳を持ってないな、どうしたらいい」
最後の説得のつもりだが、まるで成功しなかった。
妖怪は長年生きているから話し合いが通じると思っていたが、そうでもなかった。
「勝手なことを言うんじゃねえ!」
 ナツ以上に黄月は納得いかないようだった。
「まだ何もやっていない人間を殺すつもりか?」
「人間などどうでもいい、本を持つならばすべて敵だ」
「邪魔するなら狐でも猫でも切る」
「やってみせろ、お前の方がその前に真っ二つになってるぜ?」
黄月は聞く耳持たない。
そして、鬼たちも聞く耳を持たなかった。
「これはケンカというわけじゃあないよ」
「うるせえ、売られたケンカは買うまでだ」
「こりゃダメだ」
 白雲が呆れる中、屋敷にいる妖怪たちが集まってくる。
 鬼たちが一斉に襲ってくる。
 それを向かえ撃つ妖怪たち。

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