第82話

文字数 633文字


鬼たちは妖術を使わずに、手に持った武器で襲ってくる。
妖怪たちは妖術で、水を吐いたり、炎をぶつけたりして、立ち向かった。
 屋敷の庭は、妖怪と鬼が入り乱れて戦う場所になった。
「たいしたことねえぜ」
「そりゃ黄月だけだよ」
「俺が全員片づけてやらあ」
「どうかねえ」
 鬼たちは一人ずつ黄月に戦いを挑んでいた。
 けれども、次々に黄月に倒されていくのを見せられた。
 しだいに鬼たちは数を増やして、ついには5人がかりで戦っている。
 それでも黄月はひるまない。
 黄月の体に付いた傷跡は飾りではなかった。
 味方側の妖怪たちも黄月の力量には信用があるらしい。
 一方で、巻き込まれないように距離を置いているのも見えた。
 狂戦士のように暴れる黄月には、味方の支援は邪魔なのかもしれない。
 しかし、鬼たちも正面からだけでなく、回り込んで側面からの攻撃を始めた。
 だんだんと、味方のが危うくなってきた。
 ナツも当事者なので何かをしようと思っていた。
 そのたびに白雲に止められていた。
 実際に、ナツは本の力をついさっき知ったばかりで操ることはできない。
 白雲もそれを知っていて、ナツの行動を止めている。
 放っておくと、ナツが飛び出しそうだからだ。
 じっとしていようにも、鬼たちがナツの元にたどりつこうと、ぶつかってくる。
 それを寄せ付けないように、妖怪たちが防ぐ。
 これが延々と繰り返される。
 ナツは妖怪たちに守られているので動けない。
「どうにも旗色がわるいねえ」
 白雲が押されていることを指摘した。

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