第76話
文字数 385文字
「色々とあるだろうが、協力してくれ。頼む」
「いいだろう」
二つ返事で黄月が引き受けた。
「まあ、それなりにお前はやるようだしな」
ナツに近づいて黄月が言う。
「ただし、条件がある」
やっぱり、と周囲の妖怪たちから声がもれる。
何を要求するのやら、とナツは思う。
「俺のやり方に口出ししねえことだ」
黄月の言い分に、妖怪たちが呆れる。
「つまりは、俺は俺で戦う」
「黄月は自由に戦いたいわけだ」
「まあな」
「それでいい、よろしくな」
「おう」
ナツの差し出した手を、黄月が握り返す。
どのみち、寄せ集めの集団などまとめきれるはずがないのだ。
それなら自由にさせたほうがいい。
屋敷の周囲を散策しようとする前に、黄月が言った。
「俺は鬼どものことが嫌いだ」
そう言って部屋を出ていく。
「ああ、見えても、彼は人間には親切だから」
「まともな人間に関してはな」
離れていく黄月の声が聞こえてきた。