第72話
文字数 473文字
玄関で起きていることが気になったのか、朱音がやってきた。
「どうしたの?」
「何でもないさ」
「そんなこと言って、こっちまで聞こえてたよ?」
「それは気のせいさ」
いつもの笑顔で、白雲は答える。
笑顔だと何でもごまかせるようだ。
「むーっ、あにきは何かを隠している」
「僕はいつも通りだよ」
内緒にしなくてもいいのに、とナツは思う。
どうにも妹に対して白雲は過保護なところがあるようだった。
「しかし、教えないわけにはいかないだろう」
兄妹の会話にナツが割って入る。
どうせばれるのならば早い方がいい。
「僕は、あまり関わらせたくないんだ」
「そうよ、そもそも何でもないわけがある?」
白雲の意志に反して、朱音が追求してくる。
「わたしが興味を持っているのが、そんなに問題?」
朱音の追求が収まらない。
「このことで危険に巻き込みたくないんだ」
「危険なんて、今のところないだろう」
「今のところはね」
意味ありげな言葉を、白雲が言う。
何かの気配を、ナツは感じた。
すぐにナツと朱音の前に白雲が立ちふさがった。
飛んできた槍を手で叩き落とす。
はじかれた槍は地面に刺さった。