第31話

文字数 552文字

 「こっちに、いるぞ」
 倒れていた佐久間教師を見つける。
 負傷していて体の下に血だまりができている。
 ナツたちが佐久間に近づく。
 「毛むくじゃらの、熊のように大きいやつだ」
 そう言うと佐久間は気を失った。
 「俺は奴を探しに行く」
 そう言って黄月が下手人を探しに行ってしまった。
 出血の具合から医者は間に合わないかもしれない。
 ナツがとるべき手段は一つしかない。
 本の力を使って治療のできる妖怪を召喚するしかない。
 周囲に呪文字が出現して、霊力を活性化させる。
 召喚されたのは頭に皿があって、甲羅を背負って、手足には水かきがある。
 「この三郎太の出番のようですね」
 沼地に臭いを漂わせて河童は言う。
 「持ってる薬を使って、助けられないか?」
 「お安いごようですよ」
 河童はどこからともなくツボを取り出して、中に入っている塗り薬を指ですくう。
 ナツは落ちている佐久間教師の携帯電話を使って、仲間の応援を呼ぶために連絡する。
 黄月が戻ってくるのが見えた。
 「ダメだ、どこにもいねえぜ」
 「まだ、近くにいるはずだ」
 「逃げ足が速いんだろうよ、気配さえ感じねえ」
 黄月が追いつけないということはかなり実力がある妖怪に違いない。
 ナツはその事実に内心ため息をつく。

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