第33話

文字数 674文字

 「無理をせんほうがいいぞ?」
 杉野が佐久間の行動を止める。
 薬で傷が治ったといっても怪我の記憶を体が覚えている。
 「いや、言っておいたほうがいいと思う」
 調子が悪そうに見えるのを押して佐久間が話し始める。
 「自分も“良い人格”とやらを押し付けられて、社にイタズラしたことがある」
 「押し付けは困るよねえ」
 白雲が佐久間の話に微笑みながら共感を示す。
 「確かに困ったな、あのときは」
 文友がこっそりと肘で黄月の足を小突いた。
 黄月がいつも強引なことをするので当てこすりをしたのだろう。
 黄月がお返しに足で軽く文友を小突く。
 「そのときに社が少し壊れたが黙っていた」
 「これまで何も起こらなかった、という話を聞きましたが?」
 ナツが丁寧な言葉で指摘する。
 せき払いして、いいかげんに丁寧な言葉遣いをやめようかと思い始める。
 「今回もそうであろうと思っていたのだが」
 気落ちした佐久間は視線を地面に落とす。
 「さらに複雑になったような」
 文友が情報に混乱しているようで両手で頭を抱える。
 「森への出入りで襲われる、というのは消えた」
 ナツが眉にシワを寄せながらも、情報を統合した結論を話す。
 「けれども、社にちょっかいをかけたかどうかが問題になったねえ」
 白雲が指で髭を伸ばしながら疑問を言う。
 推理が進まずにみんな黙ってしまう。
 ナツは考える。
 襲われた二人の違いはなんなのだろうか?
 もしも、襲われるとするならば、なんでこんなに時間が空いているんだ?
 とりあえず、順番に話を聞くしかない。

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