第46話

文字数 585文字


 代わりにナツのほうが腹を立てた。
 どうにもナツは熱くなりすぎるところがある。
「まあ、落ち着きなよ」
 戦っている白雲のほうがナツを見て、なだめる。
 ナツたちのやり取りなど無視して、水虎が水の塊を手に取る。
それを腕の力だけで投げ飛ばしてくる。
塊は野球ボールぐらいの速さで飛んでくる。
だが白雲は、それを猫のように身軽に避ける。
妖怪とは言っても化け猫だから俊敏さは猫と同じだ。
一進一退。
状況が膠着してしまった。
双方がにらみ合っている。
白雲を手助けすることにナツは一瞬、躊躇した。
だが考え直した。
この対決は正々堂々とした勝負ではない。
ナツは本を取り出した。
この本は妖怪に対抗する霊力と召喚の力を所有者に与える。
援護するために本から霊力を引き出す。
 水虎がナツの行動に気付いた。
「その本の力を使うつもりか? もう一度、封印されてはかなわん」
ナツが本の霊力を使用するよりも先に水虎が行動した。
水虎が辺り一面に水しぶきを上げた。
水しぶきは無害なもののようだが、周囲が見えなくなった。
水しぶきが収まった後に水虎の姿は見えない。
代わりに、ばら撒かれた水によって地面に無数の水たまりが残された。
逃げられてしまった。
白雲は体にかかった水を手で払っている。
「何がどうなっているのやら」
白雲の言葉にナツも同じ気持ちだった。







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