壱 之 示唆(しさ)
文字数 971文字
額の汗を首にさげたタオルで拭い、ウエストポーチから水筒を引き抜き
呪いを撃退してからという四カ月。山での
狙撃され手足を失ったあのワンピースの女が自衛隊に連れ去られてどうなったのか知るよしもない。
キャンバスの袋に入れられ
あんなものをどうするの!?
そう思いながら、恐ろしい力と不死身に思える
もしかしたら人にあの不死身さを付与しようとしてるのかもしれない。
敵の銃弾に倒れない兵士。
それこそ恐ろしい世の中だと思った。
決めた十分の休憩で水筒をウエストポーチに戻し立ち上がる。
今では、だらだらと休むと余計に疲れることを知っていた。
荷揚げが終わり空に近い
荷揚げして山小屋に一泊し早朝に山を下りるのでテントなどのキャンプ用具は不要だった。
山小屋を出発し、峰を二つ越えて
足腰がかなり丈夫になって体力もついたので会社勤めの時よりも身体が軽かった。
景色を楽しみ、時おり出合う獣や山鳥を
山道を歩き始め下る感覚にすぐにあのことを思い出した。
マンションの七階から落ちてパトカーの屋根に救われたのだ。
あんな恐ろしいことは二度と
歩きながら身震いを覚えた。
逃れきっていない──ため息をついた寸秒、いきなりスマホの呼び出し音が鳴り始め
────陸上自衛隊陸上総隊特殊作戦群第一中隊──三等陸佐!
その電話番号と名前を見て思いだした肩書きに、もう二度と関わることもないと思った人からの着信だと顔を強ばらせ通話のアイコンをタップした。
お久しぶりですと前置きされ、困った事態が起きたと告げられた。
何ですか、と短く問いかけた。
被検体──