参 之 詛言

文字数 817文字

 ネットでいくら調べても夜空に目立つ赤い星のことがない。

 疲れていつもより遅く昼近くに寝入った。

 見た夢は最悪。

 (ひび)割れた大地に立ち、(およ)がせる(まなこ)が探すは残された生存の大地。(たよ)る人の姿は皆無で自分で、自分の足で逃れるしかない。

 極悪人とか魔族とかから逃げるなどと単純な話ではなかった。

 たとえ世界の反対に行ったとしてもそこが約束の地ではないと心の奥底で思っていた。

 見上げた空に広がるそれの圧倒的な存在感が壊滅の予兆をひしひしと伝えてくる。

 どうしてこうなったのだと叫び眼を覚ますとスマホが呼び出し音を鳴らしサイドテーブルの上で派手に震えていた。

 ベッド横に足を下ろして冷え切ったスリッパにつま先を差し入れスマホをつかんだ。

 液晶を見ると担当からだった。

 返事をすると調べの話だった。

 天文台のなんとかいう教授に問い合わせたら何かの見間違いだと一蹴(いっしゅう)されたらしい。オリオン座の四角い星座の中にそんなに明るい星はないという。

 ないと言われてもその時刻にその方角に確かに明るい赤い星を何度も眼にしているのだ。

 スマホの上にある時刻を見てもう夜だと気づいた。

 担当と話しながらテラスに出る。

 確かテラスからでも見える方角だと窓を開いて手すりに身を乗りだし首を(ひね)り夜空を見上げた。

 眼にした赤い星に興奮してそっちでも見てよと()かした。

 担当が編集部の窓開いて言われた方角を見上げているらしい。

 オリオン座を見てるが左肩の星が一番明るいと電話向こうで言い張る。

 あんなに目立つ赤い星がどうして見えないのと頭にきた。



 目立つ!? うわずった言葉が震えた。



 昨夜よりも(わず)かだけど大きいような気がする。

 一夜でわかるほど大きく見えるとしたら、数週間、数ヶ月でどうなるの!?

 夢に出てきた日中の空の大半を占めるそいつのことが思い出されテラスにスマホを落とした。



 あれは膨張してるか、近づいているかのどっちかだ!



 この夜から(ぬか)に釘を打つような苦闘が始まった。





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