漆 之 剽窃
文字数 1,215文字
心臓をバクバクさせながら一気に一階にまで駆け下りる。
男は私の部屋のあるフロアで待ち構えていた。
まるでこれから潰 す虫でも見るように蔑 んだ目つきだった。
これで敵意が確定した。
私に悪意があるのだ。
殺されるという思いがマンションから遠ざけた。だが財布も持って来ておらず夜の公園に入り街灯の灯りさすベンチに座り込んだ。
まさか追って来はしないだろうか。
それを安易だとベンチから立ち上がった。
子供用のジャングルジムに据え付けられた土管に入り中央まで這いつくばって進むとそこで膝 を抱えて息を殺した。
まさか公園の遊具をわざわざ覗き込みには来ないだろう。
だが安心するどころか、時間がたつほど不安が膨れ上がった。
ストーカーという言葉を思い浮かべ、それが殺人鬼にすり替わり命の危険に繋がり鳥肌立つ。どうしてあんな奴に目をつけられたのだろうかと困惑した。
同じ集合住宅にいることでこの先ずっと不安を抱え込むことになる。
警察に相談に行こうか。
だがあの男が何かしたわけじゃなかった。
ストーカーとしても相談にならないだろう。
火災現場に都度つど現れるのは、火災に何か関係があるのだろうか。いや、それは先入観に過ぎないと戒 めた。
普通の住宅と違い鉄筋コンクリートのマンションにはおいそれと放火はできないから寝ている時に火をつけられる心配はなかった。
でもエレベーターやエントランスで出くわし何かされたらと鳥肌立つ。
このまま夜更けまで公園ですごし帰ろうと決心した。まさかずっとマンション出入口で待ちかまえてたりはしないだろう。
部屋に帰り数日分の衣類をスーツケースにつめ財布を持ってビジネスホテルに行こう。
そう決めるとずいぶんと気持ちが楽になった。
公園の子ども用遊具の土管の中で膝 を抱えていると安心から眠気がきた。こんなところで寝てしまうのはと思いつつ──うつらうつらとしてしまう。
ハッと気づいて水銀灯の明かりさす場所まで移動して腕時計を見ると深夜になっていた。
数時間、寝込んでしまっていた。
遊具から出て人通りのない住宅街を歩いて集合住宅に戻った。
遠目に見えるエントランスに人の気配はなかった。
中に入り用心のためエレベーターは使わず八階まで階段を足を忍ばせて聞こえる音に気を配りながらゆっくりと登った。
階下の男が入る七階で一番神経を使う。
部屋に戻り玄関を施錠しスーツケースをクローゼットから取りだして着替えを詰め込んでゆく。
財布をつかみ準備を終えると玄関へゆき開錠してそっとドアを開き顔だけ廊下に突き出し通路の端まで左右確認する。
外へ出て施錠しようと鍵を取りだして生唾を呑み込んだ。
玄関扉の上角に赤いペイントでバツ印が書いてある。
帰宅した時にあっただろうかと困惑し思い出そうとした。
書いてあったとも、なかったともいえない。
いいや、こんなもの書いてなかった。
意味を考えながら廊下を急ぎ足で階段へ向かった。
男は私の部屋のあるフロアで待ち構えていた。
まるでこれから
これで敵意が確定した。
私に悪意があるのだ。
殺されるという思いがマンションから遠ざけた。だが財布も持って来ておらず夜の公園に入り街灯の灯りさすベンチに座り込んだ。
まさか追って来はしないだろうか。
それを安易だとベンチから立ち上がった。
子供用のジャングルジムに据え付けられた土管に入り中央まで這いつくばって進むとそこで
まさか公園の遊具をわざわざ覗き込みには来ないだろう。
だが安心するどころか、時間がたつほど不安が膨れ上がった。
ストーカーという言葉を思い浮かべ、それが殺人鬼にすり替わり命の危険に繋がり鳥肌立つ。どうしてあんな奴に目をつけられたのだろうかと困惑した。
同じ集合住宅にいることでこの先ずっと不安を抱え込むことになる。
警察に相談に行こうか。
だがあの男が何かしたわけじゃなかった。
ストーカーとしても相談にならないだろう。
火災現場に都度つど現れるのは、火災に何か関係があるのだろうか。いや、それは先入観に過ぎないと
普通の住宅と違い鉄筋コンクリートのマンションにはおいそれと放火はできないから寝ている時に火をつけられる心配はなかった。
でもエレベーターやエントランスで出くわし何かされたらと鳥肌立つ。
このまま夜更けまで公園ですごし帰ろうと決心した。まさかずっとマンション出入口で待ちかまえてたりはしないだろう。
部屋に帰り数日分の衣類をスーツケースにつめ財布を持ってビジネスホテルに行こう。
そう決めるとずいぶんと気持ちが楽になった。
公園の子ども用遊具の土管の中で
ハッと気づいて水銀灯の明かりさす場所まで移動して腕時計を見ると深夜になっていた。
数時間、寝込んでしまっていた。
遊具から出て人通りのない住宅街を歩いて集合住宅に戻った。
遠目に見えるエントランスに人の気配はなかった。
中に入り用心のためエレベーターは使わず八階まで階段を足を忍ばせて聞こえる音に気を配りながらゆっくりと登った。
階下の男が入る七階で一番神経を使う。
部屋に戻り玄関を施錠しスーツケースをクローゼットから取りだして着替えを詰め込んでゆく。
財布をつかみ準備を終えると玄関へゆき開錠してそっとドアを開き顔だけ廊下に突き出し通路の端まで左右確認する。
外へ出て施錠しようと鍵を取りだして生唾を呑み込んだ。
玄関扉の上角に赤いペイントでバツ印が書いてある。
帰宅した時にあっただろうかと困惑し思い出そうとした。
書いてあったとも、なかったともいえない。
いいや、こんなもの書いてなかった。
意味を考えながら廊下を急ぎ足で階段へ向かった。