拾弐 之 地獄
文字数 1,045文字
ここを抜けて前方の居住区に襲ってきたわけではないと思った。
用心しないと
たった二基の据え付け式重レーザー砲と七挺のパルス・レーザー小銃、それに少量の爆薬で五百はいる
男らがせっせと重レーザー砲を三脚ポッドに据え付けパワーパックを接続し、AI自動照準ユニットを動体検知にセットした。
だが素通しとなると心もとないと男らが言い出し、近い倉庫から数人の人手で何とか持ち上げられる箱やキャビネットを運び二基の重レーザー砲後方に積み上げ遮蔽物となるバリケードを築いた。
準備が整い船内AIマザーに隔壁大型扉のナンバーを告げ開くように船長がコンソールで命じた。
マザーから人員に重大な危険が
危険が
危険案件に
上級船員? 船長や各所クルー・チーフではないのかと思った。すると
管理官主任ウォルター、コードCQ7381AR。
マザーが認証受付した旨をスピーカーで告げ即座に大型扉が上へ開いた。
開口部から流れ込んできた猛烈な水蒸気に船外活動服のヘルメット・プレキシガラスに多量の水滴がつき始め、動体検知器が急激に電子音のテンポを跳ね上げた。
機関部の奥への通路は照明がオレンジ色のナトリウム非常灯に切り替わっており妙にものの陰影が際立っている。
水蒸気の風がおさまると動体検知器の発信音リズムが間延びしたものに落ち着いたが、ウォルターの言うとおりならもうここは
オオキミ号操縦士の一人が襲ってくるだろうかとバリケードから顔を上げ奥を見ながら他のものに告げた。他のもの全員も機関室に動くものを少しでも早く見つけようとじっと見つめていた。
そう、前方ばかり注視していたのだ。
宇宙服には後方視界確保のためカメラで写した後方映像を顔前の口元にワイドスクリーンで表示していたが、ゆっくりと忍び寄ってくる
後ろの天井から大きな影がじわじわと降りてくるのを誰一人気づいていなかった。