弐 之 詛言

文字数 936文字


 夜更けまで小説を書いていて食事を忘れていたことに気づいた。

 冷蔵庫を見てうなだれ、食品戸棚を(のぞ)いて諦めた。仕方なく買い出しに出かける。

 このごろ深夜営業のファミレスが減った。かといって女お一人様でラーメンや牛丼はカウンターに座るのに抵抗がある。

 結局、深夜はコンビニを選ぶことになる。

 車に乗って評価の高いフランチャイズの店に出かけるか、近場の閑散とした店を選ぶか。

 原稿料入っていたしと車を出すことにした。

 道路に出て運転席から見えるフロントウインドの上に視線がゆき意識を捕らわれた。


 すごく光ってる星がある。


 運転中なのでガン見は出来ないが視線を振り上げるたびにそれに眼がゆく。

 赤い星なのにすごく輝いている。

 原稿書きで眼が疲れ外に出て夜空を長い時間ぼ──っと見ていることがあるが満月ほどの明るさの星を見たことがこれまでなかった。

 あれはきっと初めて眼にする星だ。

 コンビニの通りに出て進行方向が変わりいったん視界から抜け落ちた。

 夜食を買い込み駐車場で夜空を見上げあの明るい星を探してみるとすぐにまた見つけられた。

 それほど目立って明るいのだ。

 赤色であんなに光るのは相当明るいんじゃないかと驚いた。

 興味がわいて帰ったらその星の名前をネットで調べて見てみようと思った。

 帰宅して夜食を食べてまったりとした気持ちで執筆用のパソコンでブラウザを開いた。

 調べてすぐにわかったのは、夜空に光ってるからと星とは限らないということらしい。

 星団とか星雲とかも星やガスまとまって一つに輝いて見えるみたい。

 じゃあ、眼にしたあの光りは星座表にあるかなと思った。あれだけ目立てば数ある星座の一つに含まれているかもしれない。

 冬の季節と方角からオリオン座のベテルギウスかと早合点した。

 だが目立つ一等星のベテルギウスと位置が違う。

 四角のはし目立つ星の真ん中に斜めに三つある星の上の空間に先ほど見た赤い星があるのに星座表にそれがない。近くにω(オメガ)星があるが別もので赤い星はさらに下にある。

 眉根をしかめた。

 変だ。

 いくつかのサイトを調べてもオリオン座の目立つ星表示は四隅の明るい星と真ん中の三星だけだ。



 腕組みしてオリオン座の星座表を見つめこれはどういうことだと意識を捕らわれた。





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