第63話 黒髪の魔女と褐色肌の魔女
文字数 2,671文字
ラドリックが騎士達と、シャイラが騎士団長、双子達がベスと戦っていた頃、ランシーヌとサービラは森の中央で相見まえていた。
サービラはランシーヌを憎々しげに睨み付けていたのだ。
「よくも、私を笑い者にしたわね!!」
それに対して、ランシーヌは表情を変えずに余裕を感じさせながらサービラを見つめていたの。そして、彼女は話しかけてきたのである。
「別に笑い者になどしてないわよ?」
しかし、サービラは彼女の言葉を聞いて激昂していたのだ。
「惚けないで!!」
ランシーヌはため息混じりに答えていた。
「嘘じゃないわよ……私は本当のことを言っただけだから……」
「だから、それが私を馬鹿にしていると言っているのよ!!」
ランシーヌは首を横に振りながら呆れていたのだ。
「そう……貴女には何を言っても無駄なようね……」
「私を馬鹿にした気持ちが貴女に解るの?」
「さあね……私には解らないわ……」
ランシーヌは薄ら笑いを浮かべていた。そんなランシーヌの表情にサービラは悔しそうに歯軋りをしていた。
「もういい! 貴女を殺して最後の1人になるわ!」
そう言われようが彼女は冷たい眼差しで、サービラを見つめていたのだ。
「やれるものなら……やってみなさい……。ところで戦う前に聞きたいことが有るの……貴女は魔女として目覚める前の記憶はどうなの? 見た所、この辺の国の人じゃなさそうだけど……」
「そうよ……私は、ずっと南方の国の出身よ……」
サービラは淡々と語りだしたのである。
「私の住んでいた国は貧しかったわ……食べる物も着る服も何もなく、毎日、飢えに苦しみながら生きていたわ……」
そして、彼女は更に話しだした。
「私は貧困から抜け出すために行商人の元で働いていたのよ……。そして、この国でも巡回していたわ」
「なるほど……。何故、魔女狩りに遭ったの?」
「それは、私の国ではアッハラム教を信仰していたので異教徒として処刑されたのよ」
サービラは怒りで身体が震えていたのだ。それを見たランシーヌは何故、彼女がエルミス教に恨みを抱いているのか理由が判明したのである。
(アッハラム教圏出身なのね……)
エルミス教とアッハラム教、両者とも他の宗教に対して排他的であり、宗教上の衝突も多い様である。
「エルミス教が憎い?」
サービラは頷き答えたのだ。
「そうよ! 私を改宗しようとして拷問して殺したエルミス教を許さないわ!!」
ランシーヌはそれを聞き笑いだしたのだ。それを見たサービラは怒り心頭でランシーヌに食ってかかってきた。
「何がおかしいの?」
しかし、彼女は笑いを止めなかった。そして、サービラは業を煮やして怒鳴りだしたのだ。
「答えなさい!!」
「ごめんなさいね……。そんな理由でエルミス教を憎んでいたなんて知らなかったのよ……」
サービラはその言葉の意味が理解できず困惑していたのである。そんな彼女にランシーヌは語りだしたのだった。
「私は魔女として目覚める前の記憶がないの……。けど、エルミス教に対して激しい憎悪はあったわ……」
「それは貴女が魔女狩りに遭い処刑されたからじゃないの?」
「そうかもしれないけど、本当に記憶がないのよ……」
サービラはランシーヌの話を聞いて困惑していた。
(嘘を言っているようには見えない……)
「そう……。私達魔女は全部で7人いるわ。そして、他の魔女を打ち倒して最後の1人になる……。目覚めた時に頭の中で、そう聞こえたわ……」
サービラが話すとランシーヌはハッとして驚いていた。
「7人いると聞こえたの?」
彼女がそう聞くとサービラは頷いたのだ。
「ええ、そうよ。貴女には聞こえなかったの?」
彼女は、それには答えず自分が目覚めてからの事を思い出していたのである。
(私が目覚めた時には聞こえなかった……)
ランシーヌは頭の中で考え込んでいた。
「どうしたの?」
そんなランシーヌを見て、サービラは不審げに聞いてきた。
(2人倒したから、私と彼女の他にあと3人いる……)
彼女は考え事をしていて、サービラが話し掛けてきても反応しなかったのである。
「聞いているの?」
サービラが不機嫌そうに聞いてきても、ランシーヌは上の空であったがハッと我に返り慌てて返事をしていた。
「ごめんなさい……少し考え事をしていたわ」
「何を考えていたの?」
サービラが聞いてきたので、ランシーヌは誤魔化すように答えていたのだ。
「私達の他にあと3人いるけど……どこにいるのかしらね」
サービラは興味なさそうに答えた。
「知らないわよ。それより、御託は良いからさっさと始めましょう!」
「そうね。始めましょうか……」
ランシーヌはニヤリと笑みを浮かべていた。そして、2人は対峙しだしたのだった。
2人は互いに見つめ合い微動だにしなかったが、2人の間に緊迫した空気が流れて緊張しだしていたのだ。
それは、とても長く感じられた。そして、先に動いたのはサービラであったのだ。彼女は呪文を唱えだしたのである。
「真空の霧よ、敵を覆い尽くせ! 窒息しろ!!」
サービラが呪文を唱えると灰色の霧がランシーヌの周りを覆いだしたのだ。そして、霧に覆われると彼女は息が出来なくなっていたのである。
「くっ!」
ランシーヌは呼吸が出来ず苦しんでいた。そんな、彼女の姿を見てサービラが勝ち誇ったように話し掛けてきたのだ。
「窒息する苦しみを味わいなさい……。けど、不死身だから死なないけどね」
彼女は息が出来なくなって手で喉を押さえながら藻掻き苦しんでいた。
「苦しいでしょう? それが息が出来ない苦しみよ!」
暫くするとランシーヌは目を見開き、顔を赤くさせ体を痙攣させていた。そんな苦しむ彼女の姿を見てサービラは優越感に浸っていたのである。
(苦しめ! もっと苦しむが良い……)
そんな、サービラの表情は嗜虐的な感じで溢れていた。彼女は勝利を確信していたのだ。
だが、その時であった。突然、ランシーヌが何事もなかったように立ち上がったのである。
「何?」
それを見たサービラは驚愕していた。ランシーヌは息が切れ切れに喘ぎながら不気味な笑みを浮かべていたのである。
「……どうしたの? ……もう終わり?」
「どうして……息が出来なくて動けない筈なのに……?」
サービラは、何故ランシーヌが息をしていられるのか不思議でしょうがなかった。そんな彼女にランシーヌは答えたのだ。
「貴女の魔法を解除する呪文を使ったのよ……」
「魔法を解除することが出来るの……?」
「今度は私の番よ!」
そんな疑問にランシーヌは答えず、サービラ目掛けて呪文を唱えたのだった。
サービラはランシーヌを憎々しげに睨み付けていたのだ。
「よくも、私を笑い者にしたわね!!」
それに対して、ランシーヌは表情を変えずに余裕を感じさせながらサービラを見つめていたの。そして、彼女は話しかけてきたのである。
「別に笑い者になどしてないわよ?」
しかし、サービラは彼女の言葉を聞いて激昂していたのだ。
「惚けないで!!」
ランシーヌはため息混じりに答えていた。
「嘘じゃないわよ……私は本当のことを言っただけだから……」
「だから、それが私を馬鹿にしていると言っているのよ!!」
ランシーヌは首を横に振りながら呆れていたのだ。
「そう……貴女には何を言っても無駄なようね……」
「私を馬鹿にした気持ちが貴女に解るの?」
「さあね……私には解らないわ……」
ランシーヌは薄ら笑いを浮かべていた。そんなランシーヌの表情にサービラは悔しそうに歯軋りをしていた。
「もういい! 貴女を殺して最後の1人になるわ!」
そう言われようが彼女は冷たい眼差しで、サービラを見つめていたのだ。
「やれるものなら……やってみなさい……。ところで戦う前に聞きたいことが有るの……貴女は魔女として目覚める前の記憶はどうなの? 見た所、この辺の国の人じゃなさそうだけど……」
「そうよ……私は、ずっと南方の国の出身よ……」
サービラは淡々と語りだしたのである。
「私の住んでいた国は貧しかったわ……食べる物も着る服も何もなく、毎日、飢えに苦しみながら生きていたわ……」
そして、彼女は更に話しだした。
「私は貧困から抜け出すために行商人の元で働いていたのよ……。そして、この国でも巡回していたわ」
「なるほど……。何故、魔女狩りに遭ったの?」
「それは、私の国ではアッハラム教を信仰していたので異教徒として処刑されたのよ」
サービラは怒りで身体が震えていたのだ。それを見たランシーヌは何故、彼女がエルミス教に恨みを抱いているのか理由が判明したのである。
(アッハラム教圏出身なのね……)
エルミス教とアッハラム教、両者とも他の宗教に対して排他的であり、宗教上の衝突も多い様である。
「エルミス教が憎い?」
サービラは頷き答えたのだ。
「そうよ! 私を改宗しようとして拷問して殺したエルミス教を許さないわ!!」
ランシーヌはそれを聞き笑いだしたのだ。それを見たサービラは怒り心頭でランシーヌに食ってかかってきた。
「何がおかしいの?」
しかし、彼女は笑いを止めなかった。そして、サービラは業を煮やして怒鳴りだしたのだ。
「答えなさい!!」
「ごめんなさいね……。そんな理由でエルミス教を憎んでいたなんて知らなかったのよ……」
サービラはその言葉の意味が理解できず困惑していたのである。そんな彼女にランシーヌは語りだしたのだった。
「私は魔女として目覚める前の記憶がないの……。けど、エルミス教に対して激しい憎悪はあったわ……」
「それは貴女が魔女狩りに遭い処刑されたからじゃないの?」
「そうかもしれないけど、本当に記憶がないのよ……」
サービラはランシーヌの話を聞いて困惑していた。
(嘘を言っているようには見えない……)
「そう……。私達魔女は全部で7人いるわ。そして、他の魔女を打ち倒して最後の1人になる……。目覚めた時に頭の中で、そう聞こえたわ……」
サービラが話すとランシーヌはハッとして驚いていた。
「7人いると聞こえたの?」
彼女がそう聞くとサービラは頷いたのだ。
「ええ、そうよ。貴女には聞こえなかったの?」
彼女は、それには答えず自分が目覚めてからの事を思い出していたのである。
(私が目覚めた時には聞こえなかった……)
ランシーヌは頭の中で考え込んでいた。
「どうしたの?」
そんなランシーヌを見て、サービラは不審げに聞いてきた。
(2人倒したから、私と彼女の他にあと3人いる……)
彼女は考え事をしていて、サービラが話し掛けてきても反応しなかったのである。
「聞いているの?」
サービラが不機嫌そうに聞いてきても、ランシーヌは上の空であったがハッと我に返り慌てて返事をしていた。
「ごめんなさい……少し考え事をしていたわ」
「何を考えていたの?」
サービラが聞いてきたので、ランシーヌは誤魔化すように答えていたのだ。
「私達の他にあと3人いるけど……どこにいるのかしらね」
サービラは興味なさそうに答えた。
「知らないわよ。それより、御託は良いからさっさと始めましょう!」
「そうね。始めましょうか……」
ランシーヌはニヤリと笑みを浮かべていた。そして、2人は対峙しだしたのだった。
2人は互いに見つめ合い微動だにしなかったが、2人の間に緊迫した空気が流れて緊張しだしていたのだ。
それは、とても長く感じられた。そして、先に動いたのはサービラであったのだ。彼女は呪文を唱えだしたのである。
「真空の霧よ、敵を覆い尽くせ! 窒息しろ!!」
サービラが呪文を唱えると灰色の霧がランシーヌの周りを覆いだしたのだ。そして、霧に覆われると彼女は息が出来なくなっていたのである。
「くっ!」
ランシーヌは呼吸が出来ず苦しんでいた。そんな、彼女の姿を見てサービラが勝ち誇ったように話し掛けてきたのだ。
「窒息する苦しみを味わいなさい……。けど、不死身だから死なないけどね」
彼女は息が出来なくなって手で喉を押さえながら藻掻き苦しんでいた。
「苦しいでしょう? それが息が出来ない苦しみよ!」
暫くするとランシーヌは目を見開き、顔を赤くさせ体を痙攣させていた。そんな苦しむ彼女の姿を見てサービラは優越感に浸っていたのである。
(苦しめ! もっと苦しむが良い……)
そんな、サービラの表情は嗜虐的な感じで溢れていた。彼女は勝利を確信していたのだ。
だが、その時であった。突然、ランシーヌが何事もなかったように立ち上がったのである。
「何?」
それを見たサービラは驚愕していた。ランシーヌは息が切れ切れに喘ぎながら不気味な笑みを浮かべていたのである。
「……どうしたの? ……もう終わり?」
「どうして……息が出来なくて動けない筈なのに……?」
サービラは、何故ランシーヌが息をしていられるのか不思議でしょうがなかった。そんな彼女にランシーヌは答えたのだ。
「貴女の魔法を解除する呪文を使ったのよ……」
「魔法を解除することが出来るの……?」
「今度は私の番よ!」
そんな疑問にランシーヌは答えず、サービラ目掛けて呪文を唱えたのだった。