第59話 アニウスの力

文字数 2,884文字

 俺達はサービラ達と戦いを始めるにあたって、予め決めた作戦を彼女達に伝えていた。


「先ずは、ミラとニアがベスの相手をして貰う」


 俺がそう言うと、2人は頷いていた。そして、作戦の続きを話した。


「シャイラはオッツを相手にして欲しい」


 更に言うと、ミラが答えたのである。


「了解よ! ラドリックは2人の騎士を相手をするの?」

「そうだ、俺は2人を相手にするつもりだ」


 そう答えるとニアが俺に話し掛けたのだ。


「大丈夫なの? 2人を相手するのは難しいんじゃ……」


 俺が苦笑いしていると、彼女は心配そうに見ていたのだ。しかし、俺は彼女に微笑んだのである。


「何とかなるさ……」


 俺達のやり取りを聞いていたアニウスが話し掛けてきた。


「俺達も舐められたものだな? 剣士野郎が!」


 彼はオトフリートの方を向き苛立ちながら答えていたのだ。


「そうだな……。舐められているな……」


 オトフリートも兄に同調すると、俺の方を向き睨んでいた。

 そんな彼等に向かって俺はふてぶてしい笑みを浮かべていた。

(どちらが相手になるんだ……?)

 俺が微笑んでいるのを見た騎士の兄弟は更に苛立った雰囲気になっていたのである。

 しかし、オトフリートが兄に対してこう言ったのである。


「兄貴から、そいつの相手を先にして貰っても構わないぜ」

「……2人で戦わないのか?」


 アニウスが少々戸惑い気味に言うと、オトフリートは鼻で笑い答えていた。


「こいつ相手なら兄貴1人で十分だぜ!」


 弟の発言にアニウスは直ぐに冷静になると、俺に話し掛けてきたのだ。


「おい! 貴様! 俺が相手をしてやる!」


 俺を見たアニウスは睨んでいたが、俺は挑発的な言葉を投げかけたのだ。


「本当に、お前1人だけでいいのか?」


 そう言うと、アニウスは怒りの表情で苛立ちながら叫んだ。


「貴様……! ふざけやがって!!」


 すると、彼はロングソードを抜いて構えたのだ。それに合わせて俺も背中の剣を抜いて構えたのである。


「俺1人で貴様を殺してやる!!」


 アニウスが叫びながら突っ込んでくると剣を振り下ろしてきた。それを剣で受け止めると、彼は力任せに押し込んで来たのだ。


「くっ……!」


 思わず声が漏れる程、彼の力が強かったのだ。鍔迫り合いになると、彼の顔が近くにあった。彼は俺を鋭い目で睨んでいたのだ。


「貴様は俺が仕留めてやる!」

「やれるものなら、やってみろ……」


 俺は彼の力に押されまいと必死に耐えていたのである。そして、お互いに後ろに下がると構えて対峙したのだ。

(……中々、強いな……)

 そんな感想を心の中で漏らしていると、アニウスは俺を凝視していたのだ。


「何を余裕そうにしている!!」


 俺が涼しい顔をしていたのが気に入らなかったようなのだ。そして、彼は剣を肩に担ぐと俺に向かって突っ込んで来たのだ。

 アニウスは上段に振りかぶって斬りかかってきたのだ。それを剣で受け止めると、彼はそのまま押し込んできたのである。


「死ね!!」


 彼は鬼の形相で睨んでいた。俺も負けずに睨み返すと、彼の剣を押し返していた。

 お互いの力が拮抗し合い、鍔迫り合いになっていたのだ。そして、アニウスが押し込もうと力を入れた瞬間、俺は急に力を抜いたのである。


「なっ!?」


 すると、彼の剣は勢い余って振り下ろされていたのだ。そこに隙が生じていたので、俺は素早く剣を振り上げて反撃した。


「ぐっ……!」


 俺の振った一撃は彼の左肩を浅く斬り裂いていた。アニウスは左肩の傷を見ながら鼻で笑ったのだ。


「ほう……。俺に傷を付けることが出来るのか……。今から俺の能力を使わせて貰うぞ!」


 彼はそう言うと、剣を持つ手に力を入れると、彼の全身から青いオーラが溢れ出し、剣にもオーラが纏わり付いていたのである。


「これが俺の力だ!」


 彼は叫びながら俺に向かって剣を振り下ろしてきたのだ。それを剣で受け止めると、今までの攻撃とは違う衝撃を受けたのである。

(な、何だ……? まさか……!?)

 俺が不思議に思っていると、アニウスは不気味な笑みを浮かべていた。


「気付いたか? そうさ! これが俺の能力だ!!」


 彼の剣を受け止めた時の衝撃は重かったのである。

(奴の剣の威力が重く感じる……! 攻撃を受けたら、大ダメージだ……)

 俺の表情を読んで、彼は嬉しそうに笑っていたのだ。


「やっと顔色が変わったな!」


 彼の言葉で自分の考えが合っていたと確信した。

(攻撃力が上がる能力があるのか……)

 考えている間にアニウスは攻撃を仕掛けてきたのである。彼は次々に攻撃を繰り出してきた。その攻撃は重くて速かったが何とか防ぎきっていた。


「チッ!」


 俺が攻撃を防いでいるのを見て舌打ちをすると、アニウスは距離を取ったのだ。そして、剣を上段に構えていた。

(この距離から、どうするつもりだ……)

 そう思った瞬間、剣に纏わり付いたオーラが剣の長さの倍になったのである。

 そして、剣が届かぬ距離から剣をオーラと一緒に振るってきたのである。


「なっ!?」


 俺は嫌な予感がして咄嗟に青いオーラを避けたが、頬を掠めて血が噴き出していた。


「チッ! 避けたか……!」


 アニウスは舌打ちして、悔しそうに呟いていたのだ。

(離れた距離から届くとは……!)

 俺は冷や汗を流しながら剣を構えていた。そんな俺を見て彼は再び不気味な笑みを浮かべていた。


「俺の能力に恐れを成したか!」


 彼は叫ぶと再び距離を取り、剣を構えてオーラを纏わせていた。

 俺は冷や汗を流しながらどうするか考えていたのだ。

(遠距離では戦い辛い……。なんとか近付かなければ……!)

 そんな事を考えいると、アニウスが突然前に出てきたのだ。


「死ね!」


 彼は叫びながら、剣を振り下ろしてきたのである。その瞬間、俺は咄嗟にバックステップして避けていた。そして、俺がいた場所にはオーラ状の刃が地面を斬り裂いていたのだ。

 地面から土煙が舞い上がる中、アニウスは再びオーラを纏わせると攻撃を繰り出してきた。


「逃げるな!」


 彼は叫びながら連続攻撃を繰り出してきたのである。それを必死に避けていると、オーラの刃が次から次へと襲い掛かってくるのだ。

 俺は後ろに下がりながら回避していた。しかし、アニウスは更に踏み込んで攻撃してきたのだ。

(くっ……! 避けきれない!)

 すると、俺の左腕にオーラの刃が掠めたのだが、その直前に俺の脳裏に奴の攻撃の映像が浮かんでいたのだ。


「グッ!」


 思わず声が漏れて、血が滲み出していた。そんな俺を見てアニウスは勝利を確信していた。


「フハハハハ! もう諦めるんだな!!」


 彼は大きく笑いながら叫び、剣を再び上段に構えていた。

 俺は傷を右手で押さえながら、アニウスを睨み付けていた。

 それと同時に先程のイメージが気になっていたのだ。

(奴の剣の軌道のイメージが見えた……。だが、これは何だ……?)

 不可解な現象に戸惑っていたが、ふとある予感が浮かんでいたのである。そして、アニウスを見ると勝利を確信した笑みを浮かべていたのである。


「貴様の負けだ!!」


 そう叫ぶと彼は剣を振りかぶって俺目掛けて突っ込んできたのだった。
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