第72話 カタリーナの配下達

文字数 3,394文字

 カタリーナは配下を連れて広場を歩き回っていた。配下達は3人の男達であったのである。

 彼女のすぐ後ろにいる男はセドリックという名で端正な顔立ちをしており長髪であった。見た目は30代ぐらいで背中に剣を差しているので剣士であろう。

 彼の隣の男も30代ぐらいで長身で髪は短く刈っていた。名はダミアンと言い髭を生やしており、手には片手持ち剣を持っていた。

 そして最後の男は40代の見た目でボサボサ髪を長く伸ばしていた。醜悪な顔で体型は巨漢であり体全体をマントで覆っていた。覆っているマントの所々に出っ張りがあったのである。

 いかにも犯罪を犯した人間の雰囲気を持っていた。彼の名はダンカンである。

 カタリーナが3人の配下を連れて広場を歩き回っていると、近くの民家の倉庫から物音がしたのであった。


 カタリーナ達は物音がした倉庫に近付いて行くと、セドリックが話し掛けてきたのである。


「魔女の奴……。ここに隠れているのか?」


 彼の言葉を聞いたカサンドラは倉庫から1人で出てくると話し掛けたのだ。


「あら? 私を探しているの?」


 彼女は不敵な笑みを浮かべながら倉庫から出てきたのである。そんな彼女の様子を見た配下達はカサンドラに話し掛けたのだ。


「お前1人だけなのか……」


 ダミアンが他に隠れてないか注意深く倉庫の奥を見ながら彼女に問い掛けると、彼女はニヤリと笑いだしたのだ。


「ふふっ……。1人じゃないわ……」


 彼女がそう告げると彼女の後ろに黒い影が浮かび上がったのである。その影から次々と人影が現れたのだ。それは配下達であった。カサンドラの側にはサロメ、レアン、シェール、ノバ、ロシェルの5人がいたのだ。


「なっ……!?」

「いつの間に!?」


 セドリックとダミアンが驚きの声を上げると、カタリーナがクスクスと笑いだしたのである。


「貴女達を探す手間が省けたわ……♪」


 カタリーナはカサンドラ達から視線を反らさずに上機嫌に話し掛けた。そして、彼女はカサンドラに問い掛けたのだった。


「それで……どうするのかしら? 貴女達全員で戦うの?」


 カタリーナの質問にカサンドラも不敵な笑みを浮かべながら答えたのである。


「貴女とは私が戦うわ……」


 彼女の返答を聞いたカタリーナは嬉しそうに笑うと配下の3人に命令したのである。


「貴方達は彼女に従う者達を倒しなさい!」


 3人は頷くと、それぞれ武器を構えてサロメ達に向かって行ったのだ。カタリーナはそれを見届けると再び彼女に話し掛けたのである。


「貴女とは2人っきりで勝負しましょう♪」

「いいわ……」


 カタリーナとカサンドラは互いに睨み合っていた。カサンドラの配下達も彼女の指示で事前に戦う相手を決めていたのである。

 サロメがセドリックに向かって行くとレアン、ロシェルはダミアンに向かって行ったのだ。そしてシェールとノバはダンカンの相手をするために向かって行ったのである。

 セドリックは剣を抜いてサロメと一戦を交えたのだ。


「女だからと手加減はしねーぞ……!」


 彼はそう言うとサロメに向かって剣を振り下ろした。だが、彼女は剣を躱し、斧で反撃したのだ。

 セドリックは躱されると直ぐに剣を構え直してサロメとの間合いを詰めると再び剣を振り下ろしたのである。

 彼女は斧でそれを防ぐとその体勢のまま話し掛けたのだ。


「なかなかやるね……」

「お前もな……!」


 2人が話している間に離れた所で、ダミアンはレアン、ロシェルと対峙していた。


「お前達が俺の相手をするのか……」


 彼女達が頷くと、ダミアンは2人を舐め回すように見て剣を構えて2人に向かって行った。そして、レアンとロシェルに斬りかかったのである。

 ダミアンは剣で斬りかかるとレアンはそれを躱していた。その間にロシェルは呪文を唱えていたのだ。


「地の精霊よ! 彼女に大地の鎧を与えよ!」


 彼女は呪文を唱えると、彼女の足元に土が盛り上がり、それが鎧のような形状に変化すると同時にレアンに装着したのである。

 ダミアンは構わずレアンを剣で攻撃すると鎧で弾かれたのだ。


「くそっ……!」


 彼が距離を取っていると、今度はレアンが呪文の詠唱を唱えていた。


「水の精霊よ! 敵の顔に覆って窒息させろ!」


 彼女が呪文を唱え終えると、彼女の頭上に水が浮いており、それが球体状に変化してダミアンに向かって行く。そして、彼の顔に命中すると水の膜が顔を覆い呼吸が出来なくなったのだ。


「ぐはっ……!!」


 ダミアンは息が出来ずに苦しみ藻掻きだし、レアンが彼に近付いていくと突然、彼は体がドロドロに溶けていき半透明の粘液になっていたのだ。


「なっ……!?」


 2人が動揺しているとダミアンはレアンに纏わりつき、そのまま彼女に覆い被さった。レアンは藻掻いているとダミアンの粘液が彼女の体を包み込んでいく。


「助けてっ……!! いやぁっ!!」


 レアンの悲鳴が響き渡ると彼女は粘液に飲み込まれていった。飲み込まれていく彼女を見てロシェルは動揺を隠せなかった。


「レアン……!?」


 すると、半透明の粘液の中でレアンの皮膚が段々溶けていき、苦しみ藻掻いていたのである。


「いやぁぁぁぁぁっ!! 皮膚が……、溶けていくっ……!! いやっ……! 助けてぇっ!!」


 レアンは悲痛な叫び声をあげながら皮膚が全て溶けだし筋繊維が剥き出しになっていき、更に筋肉も溶けていき骨が見えはじめていたのだ。


「いやぁぁ……! あぁぁぁ……」


 悲鳴が弱まっていく中、彼女は死に行くさなかに一矢を報いる為呪文を詠唱していたのだ。


「水の……精霊……よ! 毒の……霧を……発し……敵を……朦朧と……させ……よ……」


 呪文を唱え終えると同時に彼女の周りから紫色の霧が出ているのをロシェルは見ていたのである。


「レアン!!」


 彼女は叫ぶと慌ててレアンの所に駆けつけようとしたが、既に彼女の全身は骨と服を残し溶けていた。


「あぁぁぁ……レアン……」


 ロシェルの悲痛の叫びが響いていたのだった。

 レアンを溶かし終えたダミアンは粘液状から人間の姿に戻ると彼女の服と骨が地面に落ちていった。そして今度はロシェルに狙いを定めていた。


「あの女は俺の養分になったぞ……。お前は俺のコレクションになって貰う」


 ダミアンはロシェルに向かって歩いて行くと、彼女に向かって欲望を剥きだした笑みを浮かべていたのだ。


「何をする気!?」

「お前も館の中で見ただろ……。美術品と一緒に飾られてあった女達の体をな……。あれと同じにしてやるよ!」

「あれはお前の仕業か……!」

「ああ……。美しいコレクションだと思わないか……?」


 ダミアンはロシェルに近付いて行こうとした時、突然苦しみだした。


「うっ……!! 何だこれは……!? 体が動かねぇ……」


 どうやら今頃になって、レアンが唱えた毒の霧の効果が効きだしたのだ。


「くそっ……!! あの女の仕業か!? やってくれたな……!」


 ダミアンが毒の霧の効果で苦しんでいると、ロシェルは呪文の詠唱を唱えていたのだ。


「地の精霊よ!隆起を起こし敵の動きを封じよ!」


 するとダミアンの周りの地面が盛り上がり彼を包み込んで身動き出来なくなっていた。


「くそっ……!!」


 彼が喚いている間にロシェルは彼の所まで行き、落ちていた彼の剣を拾い上げ首めがけて振り払った。


「死ねっ!!」


 彼女は躊躇なくダミアンの首に剣を振り払うと、彼は右手を突き出し、首を守るため剣を止めようとした。

 ロシェルは構わず剣を振ると彼の右手首が切断され地面に落ちていった。ダミアンの右腕が地面に落ちると、傷口から鮮血が噴水のように吹き出していた。


「ぐあぁぁぁ……!!」


 ダミアンは激しい痛みに苦悶の表情を浮かべていたが、ロシェルは彼が苦しんでいる間も何度も彼の体に剣で斬りつけていたのだ。


「がっ……!! ぐふっ……! もう止めてくれ……」


 すると彼は血を吐きだし懇願したのだ。


「お願いだ……もう殺してくれ……」


 だが彼女は手を休めずに彼の体を切り刻んでいたのだ。


「死ねっ!!」


 そして、彼女の剣が彼の頭に振り下ろされた時、血が飛び出し脳をはみ出しながら絶命していた。

 ロシェルはダミアンを殺した後、レアンの骨と服を抱き締めて泣き崩れていたのだ。暫くして泣き止んだ彼女は立ち上がると、


「レアン……仇は取ったよ……」


 彼女がそう呟くと、少しの間呆然と立ってたが仲間の所へ移動したのである。
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