第105話 最後の魔女は滅び、新たな旅の始まり

文字数 4,396文字

 墓地の上空で配下達の戦いを2人の魔女は眺めていたのだ。オルガを乗っ取った者は、エヴリンがシャイラによって殺された事に驚きを隠せなかったのである。


「馬鹿な……! この体の守護者が倒されただと……!?」


 オルガはそう叫ぶと、ランシーヌは嘲笑う様な表情を浮かべて彼女に言ったのである。


「汝の野心もここまでの様だな……」


 彼女の言葉を聞くと、怒りに満ちた表情で言ったのである。


「今回も我の願いは志半ばで潰えるのか……。だが、最後まで抵抗しようぞ!」


 オルガがそう言うと、ランシーヌは彼女に向かって言ったのである。


「無駄だ……。汝が不死身で無くなった以上、お前の勝手にさせぬ……」


 ランシーヌがそう言った時である、オルガはニヤリと笑みを浮かべて彼女に言ったのである。


「だが、我が願いを諦める訳にはいかぬのだ! かくなる上は、この世界の理を変えて見せようぞ!」


 オルガはそう言って目を瞑ると、何か呪文の様な言葉を唱え出したのであった。その言葉は、この世界の言語ではなかったのだ……。

 ランシーヌは特に動揺する事もなく、無表情でオルガの行動を観察していたのである。


「この世界の理を変えるとは……?」


 彼女はそう呟くと、オルガは無残な廃墟となったルドレイの街跡に黒い巨大な空間が出現したのであった。

 その空間の表面は、まるで渦を巻いている様に蠢いていたのだ。そして、空間の中には無数の塊が蠢いていたのである。


「この世界の秩序を崩壊させる気か……?」


 ランシーヌはその様子に気付き質問したのである。


「そうだ……。この世界の秩序を乱すことも、我が願いの1つなのだ!」


 オルガはそう言ってニヤリと笑っていたが、ランシーヌも毅然とした態度で彼女に言ったのである。


「その前に、この世界に留まれない様に汝の肉体を朽ち果てさせようぞ……」


 彼女はそう言うと、手を前に突き出して何か呪文を唱えたのであった。彼女の言語も、この世界の言葉でなかったのだ……。

 すると、天空から無数の黒い稲妻がオルガに向かって伸びて行ったのである。そして、その稲妻は彼女の体に落ちたのであった……。


「グウォォォ……!」


 稲妻に打たれたオルガは黒焦げになりながらも憎悪のこもった目でランシーヌを睨み付けていたのだが、次第に生気が無くなってきたのである。

 彼女は先程のような再生能力を最早、失っておりボロボロになっていたのだ。そして最後の力を振り絞り言ったのである。


「この肉体が滅ぼうとも、世界の秩序は必ず崩壊させるぞ……!」


 彼女はそう言うと、見る見るうちに顔から生気を失い息絶えたのだ……。そしてオルガの肉体は地に落ちていったのである。


「あ奴の悪あがきか……。この空間はどうすることも出来ぬ……」


 彼女がそう呟くと、空間の中から無数の塊が飛び出して来たのであった。そして、それはまるで意志があるかの様に飛び回っていたのである。

 その内の1つは巨大な竜の様な形になり上空に飛んで行ったのである。他の塊も1つ1つが神話上や伝説上の怪物になり、四方に飛んで行ったのであった。


「世界の理が歪んだな……」


 ランシーヌはそう呟くと、双子やシャイラ、ベスの元に降り立ったのである……。

 オルガは滅んでも、この世界の理が変わったのであった。そして、無数の怪物が世界に飛び散って行ったのであった……。



 ランシーヌを乗っ取った者が双子達の元に降り立つと、彼女達は警戒していたのである。


「貴女は誰なの……?」


 ミラが恐る恐る聞くと、ランシーヌを乗っ取った者は笑みを浮かべて言ったのだ。


「我は……人間の言葉で言えば神の様なものだ……」

「えっ!?」

「神様……?」


 彼女達はそれを聞いて愕然として見つめていたのである。だが、ニアは勇気を振り絞って彼女に質問したのであった。


「ランシーヌの意識は無くなったの……?」


 彼女が聞くとランシーヌを乗っ取った者は少し考えてから答えたのであった。


「この者の意識は、この肉体に存在している。だが、今は眠らせている……」


 彼女はそう言うと、ベスは気になっていた事を彼女に言ったのである。


「貴女は……この世界をどうするつもりなのですか……?」


 彼女がそう聞くと、ランシーヌを乗っ取った者は答えたのである。


「我は、この世界を作り変える事を阻止したのでこの世界からは去るであろう……あ奴は滅んだが、またいずれ復活して戻ってくるかもしれぬ……」


 そして、彼女達にこれからの事を言ったのである。


「これからは……以前の世界から大きく変わってしまうだろう。今まで存在しなかった魔物や魔法、異能等が当たり前の世界になるであろう」

「そんな……!?」


 ベスは驚いて思わず声を出すと、ランシーヌを乗っ取った者は彼女達を一瞥するとこう告げたのである。


「これからどうなるかはお前達次第だ……。さて、我も去るとしよう……さらばだ」


 彼女はそう言うと、ランシーヌは気を失って倒れたのであった。


「ランシーヌ……」


 双子はそう呟くと、ランシーヌの体を揺すって起こしたのである。


「ん……」


 彼女が目を覚ますと、ミラが心配そうに顔を覗き込んで言ったのである。


「ランシーヌ……大丈夫?」


 彼女はそう聞くと、ランシーヌは笑顔で答えたのであった。


「ええ……大丈夫よ」


 そして、彼女が自分の体に異常がない事を確認すると、ランシーヌは乗っ取られた間の事を話したのである。


「身体を乗っ取られていた間、アレの意識と繋がっていたから記憶は残っているわ……」

「そうなの……?」


 ニアがそう聞くと、ランシーヌは頷きながら答えたのである。


「ええ……。でも、アレの意識では他にも、この世界を虎視眈々と狙っている存在がいるみたい……」


 彼女は顔を険しくさせたのであった。そして、ベスもランシーヌに質問したのであった。


「これからどうなるのでしょうか……」


 彼女がそう言うと、ランシーヌは腕を組んで考え込み言ったのである。


「分からないわ……。ただ言える事は、世界は変わってしまったと言う事ね……」


 ランシーヌはそう言うと、これからの事を考えていたのであった。その時であった、彼女達の前に黒い空間から1匹の怪物が迫って来たのである。


「ウガァァァ――!!」


 怪物の姿は1つ目の巨人で彼女達を踏み潰そうとしていたのであった。巨人の姿は、まるで神話上の巨人サイクロプスの様であったのだ。


「危ない!」


 ニアはそう叫ぶと、ランシーヌは呪文を唱えて魔法を放ったのである。


「敵を蒸発させる光の束よ! 粉々にしろ!」


 彼女はそう言うと手を巨人に向けてかざすと、手の平から光線が巨人に向けて放たれたのだ。


「グガァァ――!!」


 巨人の頭部に光線が当たると四散し、頭部を失った巨人はそのまま地面に倒れてしまったのである。そして、ランシーヌは彼女達に視線を向けて言ったのである。


「ここは怪物達が生まれてくる空間があるから危ないわ、避難しましょう。ラドリックは何処に行ったの?」


 ランシーヌはニアにそう聞くと、彼女は墓地の中央を指差して言ったのである。


「あそこに……」


 そして、彼女が空を指をさす方向に向かって行ったのであった

 彼女達は、墓地の中央で気を失っているラドリックの所にやって来たのだ。傍にはハーランの死体が転がっていたのである。

 ハーランの死体を見た双子とベスは、ここで彼等が死闘を演じていたのを悟っていたのだ。


「大丈夫……?」


 そして、ランシーヌはラドリックを揺すって起こしたのであった。



 俺はランシーヌから揺すられて目を覚ましたのである。


「う……ここは何処だ?」


 俺がそう言うと、彼女は優しく声を掛けたのである。


「気が付いたみたいね……」


 彼女はそう言うと、俺は双子やシャイラ、ベスを見回して言ったのである。


「ランシーヌか……俺が気を失っている間に何が起きたんだ?」


 彼女は俺が気絶している間の出来事を簡潔に説明してくれた。


「そうか……。あの魔女は死んだのか……?」


 俺がそう言うと、ランシーヌが説明を始めたのである。


「ええ……。シャイラが守護者を倒してくれたお陰で乗っ取られた魔女を滅ぼすことが出来たわ……」


 彼女はそう言って俺に説明したのであった。そして俺はルドレイを見渡すと、そこには無数の魔物達が巨大な黒い空間から出て来ていたのである。


「これは……!?」


 俺が驚いて言うと、ランシーヌは深刻な表情で言ったのだ。


「どうやらこの世界は変わってしまったみたいよ……。オルガだった者がこの世界の理を変えてしまった……」


 彼女はそう言うと、ニアが彼女に質問したのである。


「これからどうなるの……?」

「分からないわ……。ただ言えることは、私達の旅は、まだ終わりじゃないという事ね……。そして、私の記憶も取り戻したいし……」


 ランシーヌはそう言うと、俺はこれからの事を考え思い巡らしたのである。


「ラドリック……貴方はどうするの?」


 俺は少し考えてから言ったのである。


「……俺はこれからも君の旅を手伝いたい」


 俺がそう答えると、彼女は口元を緩めて答えたのである。


「良かった!」


 そして、彼女は他の人達にも聞いたのであった。


「皆はどうしたいの……?」


 すると、ベスが手を挙げて言ったのである。


「銀髪の魔女の配下と戦った場所まで、ちょっと行って来ます……」


 彼女は話すと墓地の外れまで駆けていったのである。そして、暫く時間が経つと彼女が肩を貸しながら一緒に足を引きずって歩いて来る女性がいたのであった。


「彼女は銀髪の魔女の仲間だった人です」


 ベスは彼女を皆の前に連れてくると、彼女は不安な表情を浮かべランシーヌの目を見つめて言ったのである。


「私の名前はロシェルと言います……。貴女の仲間にして下さい……」


 彼女はそう言うと、ランシーヌは彼女に聞いたのである。


「私の仲間になってくれるの……?」


 彼女がそう聞くと、ロシェルは頷いて答えたのだ。


「はい……」


 彼女はそう言うと、ランシーヌは優しい笑みを浮かべて彼女に言ったのである。


「これから宜しくね、ロシェル」


 そして、彼女はシャイラに視線を向けて質問したのである。


「貴女はどうするの?」

「もちろん、一緒に行くわ……」


 彼女はそう言うと、ランシーヌは嬉しい顔をして答えたのである。


「ええ……宜しくね」


 こうして、彼女と一緒に旅する仲間が更に増えたのであった。そして、双子が俺の服の袖を引っ張って言ったのである。


「ラドリック! 早く行こうよ!」


 2人は俺に早く出発しようと催促したのだ。俺は2人に急かされて、ランシーヌに目配せをして言ったのである。


「そうだな……行くか!」


 2人共俺の裾を引っ張っているのを、彼女は微笑ましく見ていたのだ。

 そして、俺達は墓地を出て新たな町を目指し旅を続けるのであった。それが苦難を伴う旅になろうとも、皆はランシーヌを信じて付いて行くのであったのだ……。
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