第69話 首無し騎士の、もう一つの能力
文字数 3,002文字
早朝、俺が目を覚ますと隣ではランシーヌがまだ寝ていたのだ。俺は彼女が起きるまで頭を撫でて待っていたのである。彼女が目を覚ましたのを確認すると俺達は身支度を整えて出発の準備に取り掛かったのだった。
(昨日は少しやり過ぎたな……)
昨日の夜を思い出しながら苦笑いを浮かべていたら、シャイラは既に起きていて近付くと話し掛けてきたのだ。
「ラドリック……おはよう」
「あぁ、おはよう……」
シャイラに挨拶を返すと彼女は俺の顔をジッと見つめてきたのだった。
「何だ?」
俺が首を傾げていると、彼女はポツリと言葉を漏らしたのだ。
「昨日はお楽しみだったようね……」
彼女の言葉に苦笑いするしかなかった。まさか、聞こえていたのか?
そんな俺達のやり取りを見ていたランシーヌが近付いてくると彼女に向けて口を開いたのだ。
「シャイラ、何のことかしら?」
彼女は笑顔で訊ねていたのだが、目は全く笑っていなかったのである。そんな様子にシャイラも動じることなく答えたのだ。
「気にしないで……」
そんなやり取りをしていると双子達やベスが目を覚ましたので俺達は馬車に乗り出発したのである。
それから、俺達はルドレイの街を目指して進んで行くのだった。
街道を進んでいる最中、御者台の隣にランシーヌが座り御者をしている俺に話し掛けてきたのだ。
「ねぇ……、ラドリック?」
「何だ?」
俺は前を見ながら答えたのである。ランシーヌは微笑みながら話しかけてきたのだった。
「もう、3人の魔女を倒したのね・・・・・」
彼女は、これまで戦って来た魔女達の追憶に思いを馳せていた。
「そうだな……」
俺が返事をすると、彼女は更に言葉を紡いだのだ。
「あと、3人いるみたいね……。サービラが目覚めた時、全員で7人いるという声が聞こえたって言ってた……」
「そうなのか……」
俺はランシーヌの言葉に答えながら考え事をしていた。
(あと3人も魔女を倒さないといけないのか……)
そんなことを考えていると、前から疑問に思っていたことが頭に浮かんだ。それは、守護者についてだった。
「なぁ、ランシーヌ……」
「何? どうしたの?」
「魔女が守護者を作る意味が分からないんだ……。魔女にとって守護者が弱点になるというのに……」
ランシーヌは顎に手を置き考えていたのだ。そして、口を開いたのである。
「それは……多分、守護者を作らないと不死身性が失われていく筈よ。だから、魔女は守護者を作るの」
「だから、守護者を作るのか……」
俺が聞くと彼女は更に説明してくれたのだが、他にも疑問が浮かんできたのだ。
「騎士達と戦っている時に突如、俺の頭の中に奴等の剣の動作が予知出来る様になったんだが、それはどのような能力なんだ?」
説明するとランシーヌが何か思い出したような顔をしていたのである。そして、彼女は俺に話し掛けてきたのだ。
「首無し騎士は伝説では相手の死を予知出来るわ……。きっと、その能力が開花したのよ……」
ランシーヌの話を聞くと俺は納得していた。彼女の説明で理由が分かったのだ。
「なるほどな……。それが、首無し騎士の能力なら納得できる」
それからも俺達は他愛もない会話をしながら旅をしていたのだった。
一方、ランシーヌ達がアンドレアと戦っていた頃、銀髪の魔女カサンドラはヤルトンの占い師の老婆に言われた通りに北に向かっていた。
銀髪の魔女カサンドラは魔女狩りに遭う前は聖職者であり、教団から聖女認定されていた程の人物であったのである。
彼女はエルミス教の信仰に基づいて布教に尽力し、その功績が広く認められたため聖女に認定されていたのであった。
しかし、同性愛者であったため、その秘密を知った彼女を妬み嫉妬する者達の陰謀により告発されてしまい、魔女裁判での不利な状況で魔女として認定されてしまったのだ。
魔女として認定された後、彼女に持っていたのは魔女としての拷問であった。それは、彼女にとって耐え難い苦痛であり、死よりも辛いものであった。
そして、彼女は恨みと絶望を感じながら火炙りの刑で処刑されたのであった。
魔女として復活した後は、配下や守護者を作り他の魔女の情報を収集しながら町にある教団の人間を殺害していたのである。
そんなカサンドラは他の魔女を倒すため北に向かっているのだった。
彼女達は北を目指しながら移動していたが途中、森林地帯に入ると、突然、山賊達が姿を現したのである。
山賊達はカサンドラ達の姿を見つけると下卑た笑いをしながら、彼女達に近付いて来たのだ。
「ヒヒヒ……女達だけだぞ! いい獲物を見つけたぜ……」
「ぐへへ……。若い女は犯してやる!」
山賊達は下品な笑いを浮かべて彼女達に近寄って来たのである。それを見た配下の1人が叫んだのだ。
「この下衆共が! 我々に指1本触れるな!」
その言葉を聞いた他の配下達も臨戦態勢を取り背が高く大柄で筋肉質な修道女姿の女が武器を取り出した。
彼女が取り出したのは三日月斧と呼ばれる戦斧の一種だった。それを振り回しながら山賊達に向かって行ったのだ。
「うぉぉ――!!」
女とは思えない怪力で振るわれた三日月斧は次々と山賊達の首を斬り飛ばしていったのである。
首を失った胴体から鮮血が吹き出し辺り一面は血の海になっていた。
その光景を見て他の配下達も負けていられないと一斉に山賊達に攻撃を仕掛けて行ったのだ。
彼女達は水の精霊魔法で毒性のある霧を発生させ苦しませ、風の精霊魔法で切り刻み、地の精霊魔法で地割れを起こし足をすくって転倒させ、炎の精霊魔法で山賊達を火達磨にしたのであった。
圧倒的な彼女達の力に山賊達は成す術もなく次々と倒されていき1人を残し全滅したのである。
「た……助けてくれ! 金なら出す!」
残った山賊は手を挙げて命乞いをしていたのだ。しかし、彼女達がそんなことを許す筈がなかったのである。
カサンドラは生き残りの山賊に微笑みながら話しかけたのだった。
「ねぇ……、ここから近い町の情報を教えて欲しいわ……」
彼女は微笑みを絶やさず優しい声音で話し掛けたのだが、その笑みが逆に不気味さを醸し出していたのだった。
男は震えながらも口を開いたのだ。
「ここから一番近い町はサンスタという町だ……。しかし、そこには魔女と噂される狂った女に支配されている……」
その言葉にカサンドラが何か思い付いたような顔をしていた。そして、男に質問したのである。
「それで、魔女の名前は何て言うのかしら?」
「し……知らねえ……」
男は震えながらカサンドラから目を逸らしていた。それは恐怖を感じているようであり、まるで蛇に睨まれた蛙のようであったのだ。
「そう……残念だわ……。じゃあ、あなたはもう不要ね……。サロメ! 始末して!」
そう言うとサロメと呼ばれた大柄な女は斧を男の頭頂に振り下ろし、縦に一刀両断したのだった。
縦に真っ二つになった男は左右に別れて、切断面を見せながら地面にゆっくり倒れていったのだ。
死体の周りには脳や脳漿、内臓が散乱していたのである。
「あぁ……、汚らわしい……」
カサンドラは地面に転がっている死体を嫌悪した表情で見詰めていたのだった。そんな様子に他の配下達が話し掛けてきたのだ。
「カサンドラ様、先を急ぎましょう」
配下達の言葉に頷くと彼女はサンスタの町に向けて歩き始めた。そして、彼女と共に配下達も移動を開始したのだった。
(昨日は少しやり過ぎたな……)
昨日の夜を思い出しながら苦笑いを浮かべていたら、シャイラは既に起きていて近付くと話し掛けてきたのだ。
「ラドリック……おはよう」
「あぁ、おはよう……」
シャイラに挨拶を返すと彼女は俺の顔をジッと見つめてきたのだった。
「何だ?」
俺が首を傾げていると、彼女はポツリと言葉を漏らしたのだ。
「昨日はお楽しみだったようね……」
彼女の言葉に苦笑いするしかなかった。まさか、聞こえていたのか?
そんな俺達のやり取りを見ていたランシーヌが近付いてくると彼女に向けて口を開いたのだ。
「シャイラ、何のことかしら?」
彼女は笑顔で訊ねていたのだが、目は全く笑っていなかったのである。そんな様子にシャイラも動じることなく答えたのだ。
「気にしないで……」
そんなやり取りをしていると双子達やベスが目を覚ましたので俺達は馬車に乗り出発したのである。
それから、俺達はルドレイの街を目指して進んで行くのだった。
街道を進んでいる最中、御者台の隣にランシーヌが座り御者をしている俺に話し掛けてきたのだ。
「ねぇ……、ラドリック?」
「何だ?」
俺は前を見ながら答えたのである。ランシーヌは微笑みながら話しかけてきたのだった。
「もう、3人の魔女を倒したのね・・・・・」
彼女は、これまで戦って来た魔女達の追憶に思いを馳せていた。
「そうだな……」
俺が返事をすると、彼女は更に言葉を紡いだのだ。
「あと、3人いるみたいね……。サービラが目覚めた時、全員で7人いるという声が聞こえたって言ってた……」
「そうなのか……」
俺はランシーヌの言葉に答えながら考え事をしていた。
(あと3人も魔女を倒さないといけないのか……)
そんなことを考えていると、前から疑問に思っていたことが頭に浮かんだ。それは、守護者についてだった。
「なぁ、ランシーヌ……」
「何? どうしたの?」
「魔女が守護者を作る意味が分からないんだ……。魔女にとって守護者が弱点になるというのに……」
ランシーヌは顎に手を置き考えていたのだ。そして、口を開いたのである。
「それは……多分、守護者を作らないと不死身性が失われていく筈よ。だから、魔女は守護者を作るの」
「だから、守護者を作るのか……」
俺が聞くと彼女は更に説明してくれたのだが、他にも疑問が浮かんできたのだ。
「騎士達と戦っている時に突如、俺の頭の中に奴等の剣の動作が予知出来る様になったんだが、それはどのような能力なんだ?」
説明するとランシーヌが何か思い出したような顔をしていたのである。そして、彼女は俺に話し掛けてきたのだ。
「首無し騎士は伝説では相手の死を予知出来るわ……。きっと、その能力が開花したのよ……」
ランシーヌの話を聞くと俺は納得していた。彼女の説明で理由が分かったのだ。
「なるほどな……。それが、首無し騎士の能力なら納得できる」
それからも俺達は他愛もない会話をしながら旅をしていたのだった。
一方、ランシーヌ達がアンドレアと戦っていた頃、銀髪の魔女カサンドラはヤルトンの占い師の老婆に言われた通りに北に向かっていた。
銀髪の魔女カサンドラは魔女狩りに遭う前は聖職者であり、教団から聖女認定されていた程の人物であったのである。
彼女はエルミス教の信仰に基づいて布教に尽力し、その功績が広く認められたため聖女に認定されていたのであった。
しかし、同性愛者であったため、その秘密を知った彼女を妬み嫉妬する者達の陰謀により告発されてしまい、魔女裁判での不利な状況で魔女として認定されてしまったのだ。
魔女として認定された後、彼女に持っていたのは魔女としての拷問であった。それは、彼女にとって耐え難い苦痛であり、死よりも辛いものであった。
そして、彼女は恨みと絶望を感じながら火炙りの刑で処刑されたのであった。
魔女として復活した後は、配下や守護者を作り他の魔女の情報を収集しながら町にある教団の人間を殺害していたのである。
そんなカサンドラは他の魔女を倒すため北に向かっているのだった。
彼女達は北を目指しながら移動していたが途中、森林地帯に入ると、突然、山賊達が姿を現したのである。
山賊達はカサンドラ達の姿を見つけると下卑た笑いをしながら、彼女達に近付いて来たのだ。
「ヒヒヒ……女達だけだぞ! いい獲物を見つけたぜ……」
「ぐへへ……。若い女は犯してやる!」
山賊達は下品な笑いを浮かべて彼女達に近寄って来たのである。それを見た配下の1人が叫んだのだ。
「この下衆共が! 我々に指1本触れるな!」
その言葉を聞いた他の配下達も臨戦態勢を取り背が高く大柄で筋肉質な修道女姿の女が武器を取り出した。
彼女が取り出したのは三日月斧と呼ばれる戦斧の一種だった。それを振り回しながら山賊達に向かって行ったのだ。
「うぉぉ――!!」
女とは思えない怪力で振るわれた三日月斧は次々と山賊達の首を斬り飛ばしていったのである。
首を失った胴体から鮮血が吹き出し辺り一面は血の海になっていた。
その光景を見て他の配下達も負けていられないと一斉に山賊達に攻撃を仕掛けて行ったのだ。
彼女達は水の精霊魔法で毒性のある霧を発生させ苦しませ、風の精霊魔法で切り刻み、地の精霊魔法で地割れを起こし足をすくって転倒させ、炎の精霊魔法で山賊達を火達磨にしたのであった。
圧倒的な彼女達の力に山賊達は成す術もなく次々と倒されていき1人を残し全滅したのである。
「た……助けてくれ! 金なら出す!」
残った山賊は手を挙げて命乞いをしていたのだ。しかし、彼女達がそんなことを許す筈がなかったのである。
カサンドラは生き残りの山賊に微笑みながら話しかけたのだった。
「ねぇ……、ここから近い町の情報を教えて欲しいわ……」
彼女は微笑みを絶やさず優しい声音で話し掛けたのだが、その笑みが逆に不気味さを醸し出していたのだった。
男は震えながらも口を開いたのだ。
「ここから一番近い町はサンスタという町だ……。しかし、そこには魔女と噂される狂った女に支配されている……」
その言葉にカサンドラが何か思い付いたような顔をしていた。そして、男に質問したのである。
「それで、魔女の名前は何て言うのかしら?」
「し……知らねえ……」
男は震えながらカサンドラから目を逸らしていた。それは恐怖を感じているようであり、まるで蛇に睨まれた蛙のようであったのだ。
「そう……残念だわ……。じゃあ、あなたはもう不要ね……。サロメ! 始末して!」
そう言うとサロメと呼ばれた大柄な女は斧を男の頭頂に振り下ろし、縦に一刀両断したのだった。
縦に真っ二つになった男は左右に別れて、切断面を見せながら地面にゆっくり倒れていったのだ。
死体の周りには脳や脳漿、内臓が散乱していたのである。
「あぁ……、汚らわしい……」
カサンドラは地面に転がっている死体を嫌悪した表情で見詰めていたのだった。そんな様子に他の配下達が話し掛けてきたのだ。
「カサンドラ様、先を急ぎましょう」
配下達の言葉に頷くと彼女はサンスタの町に向けて歩き始めた。そして、彼女と共に配下達も移動を開始したのだった。