第101話 人智を超えた存在に乗っ取られた魔女達

文字数 3,448文字

 急に天候が変わり辺りが暗くなっていき、空には稲妻が走り出していたのであった。


「何だ……これは……?」


 ハーランがそう呟くと、俺達は空を見上げた。すると、上空から青白い稲妻が墓地の中央に落ちて来たのである……!

 稲妻が落ちた場所はランシーヌ達が戦っていた場所だったのだ。


「!?」


 ハーランと俺が墓地の中央に視線を向けると、空に高く飛んでいくランシーヌとオルガの姿が目に映ったのだ。


「ランシーヌ!?」


 そう叫んだが、ここから俺の声は届いていないだろう。ハーランもオルガが飛んで行ったのを目にして驚いていたのだ。


「何故、飛んで行った?」


 彼はそう言うと、彼女達が飛んで行った方向を見ていたのであった……。

 しかし、そんな事にも構っておられず俺達は再びお互いに剣を構え睨み合ったのだ。

 そして、2人同時に駆け出したのである……。



 その頃、ミラとニアは幽体のエヴリンに手を焼いていたのであった。エヴリンは幽体なので、こちらの攻撃がすり抜けてしまうのである。

 そして、2人は疲労で徐々に動きが鈍くなり、エヴリンに弄ばれていたのであった……。

 2人の体は彼女の透過攻撃で倦怠感が頂点を迎えており、立っているのもやっとの状態だったのだ……。


「もう……終わり……?」


 エヴリンはそう呟くとミラとニアを嘲笑っていたのである。彼女達は悔しそうな表情を浮かべながら歯を食いしばって耐えていたのだった。

 双子のそんな様子を見てベスは心配そうな表情を浮かべていたが、彼女はつむじ風になって何とかエヴリンの攻撃を避けていたのである。

 しかし、エヴリンも空中を浮遊して追いかけてくるので、ベスはただ逃げるしかなかったのだ。


「うう……このままでは……」


 そう呟きながら逃げていると突然、空が曇り急に風が強く吹き始めたのである。そして、空に稲妻が走っていたのだ。


「!?」


 彼女達が空を見上げると、雷雲から青白い稲妻が落ちていたのだ。そして、墓地の中央部分に直撃したのである……。


「あれは……!?」


 双子が驚いていると、墓地の中央ではランシーヌが戦っていた場所が目に留まったのだ。そして、彼女達はその場所から上空に飛んで行ったのである。

 それを見て彼女達は嫌な予感に襲われていた。


「ランシーヌ達が飛んで行った……?」

「何処に行ったの……?」


 双子がそう呟くと、ベスは墓地の中央から誰かがやって来るのを目にしていた。


「あれは……!?」


 ベスはそう叫ぶと、幽体のエヴリンも気が付いたようでそちらの方向を向いたのである。


「あれは……シャイラ!?」


 彼女が叫ぶと、双子もシャイラの方を振り向いたのだ。彼女はゆっくりと歩いて来ると、ミラとニアに手を差し伸べたのだ。


「大丈夫?」


 シャイラがそう聞くと双子は安心したのかホッと息を吐いていた。

 そして、ベスも上空から降りて来たのである。


「ランシーヌ達はどうなったの?」


 ミラが彼女に質問すると彼女は首を横に振ったのだった……。


「分からない……上空に飛んで行ったの……2人に稲妻が落ちて何者かに体を乗っ取られたみたい……」


 シャイラがそう答えると、双子とベスは絶句していたのであった……。


「じゃあ、ランシーヌは……?」


 ニアがそう言うとシャイラはただ黙って俯いたのである。すると、彼女達は幽体のエヴリンが近付いている事に気が付いていなかったのだ……。



 墓地の上空に飛んで行ったランシーヌとオルガはルドレイの町の上空まで来ると、眼下に広がっていた町を見下ろしていたのだ。


「我が目的の為に、まずこの町から滅ぼすとしよう……」


 オルガがそう呟くと彼女はルドレイの町の上空で止まったのである。すると、両手を広げ掌に黒色の光が集まって来たのである。


「何をする……?」


 ランシーヌは怪訝に思い質問すると、彼女は答えたのである。


「町に落とす……」

「やめよ!」


 ランシーヌは彼女を止めようとしたのだが、オルガはニヤリと笑って答えたのである。


「先ずは……世界を作り変える為の第一歩……」


 彼女がそう答えると掌に集まっていた黒色の光の塊をルドレイの町に向かって落としたのだった……。

 そして、光が落ちたと同時に町では大爆発が起きたのであった……!

 一瞬でルドレイの町は爆発に包まれ、上空からランシーヌ達が見下ろしている中、町は消滅していたのである……。


「……」


 ランシーヌはオルガを咎めるように見ていたが彼女は平然と嘲笑っていた。そして、消滅した街を見下ろし冷笑を浮かべたのであった……。


「我の願いを叶えたいだけ……我の願いを切望している人間もいるなり……」


 オルガはそう呟くと、ランシーヌを嘲笑うような視線を向けたのであった。


「世界を作り変える……」


 そう言うと彼女は掌から再び黒色の光の塊を出したのである。しかし、ランシーヌはルドレイが消滅したにも関わらず無表情でいた……。


「我の目的は汝の邪魔をすること……」


 ランシーヌはそう呟くとニヤリと笑ったのである。彼女もランシーヌ本人の意思ではなく乗っ取った者の意志で喋り出したのだ。今は2人とも魔女の姿をした何かであった……。


「なら、我も世界を作り変えようとするのを邪魔するだけ……」


 彼女はそう答えると2人は空中で衝突し交戦状態になったのである。彼女達は交戦しながら上空を移動していたのだ。そして、近くの小高い丘に降り立ったのだ。


「我の邪魔をするなら勝負しようぞ……」

「我は汝の思い通りにさせるつもりは更々ない……」


 オルガとランシーヌはお互い対峙すると体中から禍々しい妖気を発しながら睨み合っていた。


「では、行くぞ!」


 オルガが叫ぶとランシーヌに向かって掌を向けて強力な光の槍を飛ばしたのだった。しかし、ランシーヌも掌に妖気をのせ受け止めると光の槍は不可視の障壁に吸い込まれていったのである。


「汝の攻撃は、その程度か……」


 彼女はニヤリと笑うと答えたのだった……。オルガは舌打ちをすると掌に妖気を集中させると巨大な火の玉を作り出したのだ。そして、ランシーヌに向かって放ったのである……。


「小癪な真似を……!」


 ランシーヌがそう呟くと巨大な火球が彼女の障壁を直撃した……。そして、彼女の障壁は破壊され爆発に巻き込まれて上空に吹き飛ばされたのであるが空中で回転し体勢を立て直したのだ。


「これでどうだ……?」


 オルガはそう呟くと、ランシーヌの姿は全身が焦げていたのである。しかし、火傷の傷も魔女の時とは比べ物にならない速度で回復していったのである。


「当たり前か……」


 オルガは当然の事のように呟いている間に彼女の火傷は元道りになっていたのだ……。


「汝は……ここで排除する……これが我からのお返しだ……」


 ランシーヌがそう言うと、ニヤリと笑って掌に禍々しい黒色の球を作ったのである。


「では我も受けて立とう……」


 そう言うと彼女の掌にも真っ黒で禍々しい球が集まっていたのだ。そして2人は同時に真っ黒な球を発射したのだ……。

 お互いの放った黒色の球がぶつかり合い、空中で大爆発を起こしていた。しかし、ランシーヌの威力が勝りオルガを跳ね飛ばしていたのである……。


「!?」


 オルガは空中で回転しながら体勢を立て直し、地面に着地したのだった。彼女は全身血だらけだったが瞬時に傷が塞がっていったのだ。

 そして、ランシーヌに向かって叫んだのである。


「ならば我の本気を見せてやろうぞ!」


 彼女はそう叫ぶと禍々しい妖気を爆発的に放出し、禍々しい姿へと変貌していったのだった……。

 彼女の姿は人間の形から徐々に変化していき、目が赤く光り翼が生え口から牙が鋭く伸びて行ったのである。


「くくく……」


 彼女は変化した自分の姿に満足したのかニヤリと笑っていたのだ……。そして、ランシーヌの姿を見ると口を開いたのである。


「汝は人間の姿のままか?」


 オルガがそう聞くとランシーヌは答えたのだった。


「我らは同類、言うまでもない……」


 そう言うと彼女も禍々しい妖気を放出し同じような姿に形を変えていったのだ……。

 彼女達は明らかに人外の存在であったが、ランシーヌ達魔女の力を遥かに超えた存在の様であったのだ。


「我はここで汝と決着をつける……世界を作り変える為に……」


 オルガがそう宣言するとランシーヌも鋭く伸びた牙を覗かせニヤリと笑って答えたのだった。


「面白い……再び汝の野望の未練を断ち切ってやろうぞ!」


 2人は不敵な笑みを浮かべ見つめ合っていたのだ。そして、彼女達は同時に攻撃を繰り出したのであった……。
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