第54話 大剣の行方
文字数 2,984文字
俺は魔女の居場所に向かうための準備をする為、武器屋へ剣を取りに行った。
そして、武器屋に入って行って店主から研いで貰った剣を受け取ると、店内に飾ってあったグレートソードが無くなっているのに気が付いたのだ。
「あれっ? あの大きな剣は?」
俺が聞くと、店主は鬱陶しい表情で答えた。
「ああ……、あれは今は貸している……」
店主の言葉を聞いて不思議に思い、理由を聞いてみた。
「何故なんだ?」
そう聞くと、店主は舌打ちをしたのだった。
「あんたが来る少し前に騎士団の副隊長が来て暫く貸してくれと言われたんだ……」
店主がそう言うと、俺は顎に手を当てて考え込んでいた。
(騎士団の副隊長……? 誰なんだ?)
「副隊長とは誰なんだい?」
俺が聞いてみると、店主は嫌そうな顔で答えてくれたのである。
「あぁ……、オトフリートと言う奴だったな」
それを聞いた瞬間、俺は衝撃を受けていた。
(オトフリート!?)
「何故、剣を貸してやったんだ?」
聞くと、店主は更に面倒くさそうな表情を浮かべた。
「貸してくれと言った時、この剣を思い切り振るうことが出来たら貸してやると言ったんだよ……」
「それで、振るうことが出来たと言うわけか?」
俺が聞くと、店主は苦々しく頷いたのだ。
「ああ……。だから、騎士団の副隊長と言えど出来るわけがないだろと高を括っていたんだが……」
「それが出来たから、貸したと言うわけか……」
俺がそう聞くと、店主は頷き答えてくれたのだ。
「ああ……。あれは人間離れをした膂力だったぞ」
それを聞いて俺は驚愕していたのだ。
(オトフリートの奴……、あの剣を扱えるのか!? 奴と戦ってみたい……)
ランシーヌから人間を超えた力を貰ってから、以前より好戦的になったというか戦いに高揚感を感じずにはいられなくなっていたのだ。
そう思うと、自然と笑みが零れていた。そんな俺の様子を見て、店主は首を傾げていたのである。
「何を笑っているんだ?」
店主が不思議そうに聞くと、俺は笑顔を向けたまま答えたのだ。
「いや……何でもない」
そんな俺の様子を見て、店主は更に怪訝な表情を浮かべていたのであった。
俺は店主に礼を言うと、そのまま武器屋を出て宿屋に戻っていた。
(オトフリートか……、彼は、どんな戦い方をするのか……)
そんな事を考えつつ、俺は皆と合流する為に急いで宿に戻るのであった。
宿に戻ると、既に皆集まっており出発の準備が整っていたのである。
そしてランシーヌが俺に向かって真面目な表情で手招きしていたのだ。
「どうしたんだ?」
俺が聞くと、ランシーヌは隣に来るように手招きをし、話始めたのである。
「実は貴方が武器屋に行っている間、皆と話し合ったの……」
「どんな事を?」
そう聞くと、彼女は真剣な面持ちで答えてくれた。
「魔女の屋敷は街中にあるの。そんな中、私達が戦おうものなら町の人に被害が出るし、騒ぎを聞きつけて兵士や騎士団が駆け付けて来るかもしれないわ」
「ああ……、そうかもしれないな……」
俺はランシーヌの話を聞いて納得していた。確かに彼女の言う事は正しいだろう。
そんな事を考えていると、彼女は話を続けたのだ。
「更に魔女の配下には騎士団の者達がいるから、戦うにしても町の外がいいと思うの……」
「それは分かったけど、どうやって奴等と外で戦うんだ?」
俺がそう聞くと、ランシーヌは胸を張って答えたのだ。
「それは私に任せて……」
彼女はそう言うと、双子達に目配せをしていた。すると、2人は頷いていたのだ。
(何をするつもりなんだ……?)
俺は不思議に思っていたが、ランシーヌは笑顔で説明を始めたのである。
「私が囮となって彼等を外に誘い出すわ……」
「えっ?」
俺は驚いて聞き返していた。すると、彼女は笑顔のまま答えてくれたのである。
「そうすれば魔女は私を追ってくるでしょ……。その間に皆は追って来た配下達と戦う事だけを考えればいいわ」
「ちょっ、ちょっと待て!」
俺は慌てて口を挟んだ。すると、ランシーヌは不思議そうな顔を向けてきたのである。
「何かしら?」
「いくらなんでも危険すぎるだろう!?」
俺がそう言うと、彼女は首を傾げた。
「大丈夫よ……。私には考えがあるから……」
彼女がそう言うと、俺は首を横に振っていたのだ。
「いや、そういう問題ではなくてだな……!」
俺が焦りながら言うと、彼女はニッコリと微笑んでいた。そして、俺の胸に手を置いてきたのだ。
「心配してくれるのね……、嬉しいわ」
彼女はそう言うと、俺の胸に頭を預けてもたれかかってきた。そんな彼女を俺は優しく抱きしめていたのだ。
「心配するのは当然だろ……」
俺がそう呟くと、ランシーヌはクスクスと笑っていたのである。
「そうね……。じゃあ、皆行くわよ!」
「わかった!」
「うん!」
ランシーヌがそう言うと、双子達は元気よく返事をした。俺は止めることもできずに、彼女の後に続いて行くことしか出来なかったのだ。
(もう……、何を言っても止まらないだろう……)
そう心の中で呟くと、諦めて着いて行くことにしたのだった。そして、俺達は宿を出てサービラの屋敷の方に歩いて行ったのである。
歩きながらランシーヌは俺の方を向いて話しかけてきた。
「貴方は何もしなくていいからね……」
彼女はそう言うと、俺にウインクをしてきたのである。俺は苦笑を浮かべながらため息をついたのだった。
(はぁ……、もうどうなっても知らないからな……!)
そして、俺達はサービラの屋敷の前に辿り着いたのだ。俺は屋敷を見ながら考えていた。
(さてと……、どうやって誘い出すかな……)
そんな事を考えていると、双子達が小声で話しかけてきた。
「これからどうする?」
「どうするの……?」
2人が不安そうな表情を浮かべると、ランシーヌが笑顔で口を開いた。
「私が先に行くわ……。貴女達のどちらかが、ここに残ってシャイラを救出して欲しいの……。どうする?」
彼女がそう聞くと、彼女達はお互いに顔を見合わせた後、ニアが口を開いたのだ。
「私が残るわ……」
そう言うと、ニアはランシーヌを見つめていたのである。彼女はそんなニアの頭を優しく撫でていた。
「ニア、頼んだわよ!」
ランシーヌがそう言うと、ニアは頷き答えていた。
「任せて……!」
「一応、誰か待機してるかもしれないから気を付けてね……」
ミラも妹を心配してか、真剣な表情で言っていた。
「大丈夫よ……」
ニアは笑顔で答えた後、ランシーヌと何か話をしていたのだ。そして、話が終わると俺の方に寄ってきたのである。
「それじゃ、ランシーヌが魔女達をおびき寄せて出て行ったら中に入るわ!」
「分かったわ……」
ランシーヌが返事をする。だが、俺は彼女に視線を向けて気になっていた事を話しかけたのだ。
「そう言えば、どうやっておびき出すんだ?」
すると、彼女はニコッと微笑んで答えてくれたのである。
「私が囮になって敵を町の外に連れ出すわ……。その間に、配下達の相手をしてくれればいいわよ」
「そうか……」
俺がそう答えると、ランシーヌはニッコリと微笑んでいた。
「心配しないで……。私は死なないわ!」
彼女はそう言うと、俺の頬に口づけをしてきたのだ。俺は照れてしまい顔が赤くなってしまったのである。そんな俺を見た後、彼女は微笑みながら手を振ってサービラの屋敷に入って行ったのだった。
そして、武器屋に入って行って店主から研いで貰った剣を受け取ると、店内に飾ってあったグレートソードが無くなっているのに気が付いたのだ。
「あれっ? あの大きな剣は?」
俺が聞くと、店主は鬱陶しい表情で答えた。
「ああ……、あれは今は貸している……」
店主の言葉を聞いて不思議に思い、理由を聞いてみた。
「何故なんだ?」
そう聞くと、店主は舌打ちをしたのだった。
「あんたが来る少し前に騎士団の副隊長が来て暫く貸してくれと言われたんだ……」
店主がそう言うと、俺は顎に手を当てて考え込んでいた。
(騎士団の副隊長……? 誰なんだ?)
「副隊長とは誰なんだい?」
俺が聞いてみると、店主は嫌そうな顔で答えてくれたのである。
「あぁ……、オトフリートと言う奴だったな」
それを聞いた瞬間、俺は衝撃を受けていた。
(オトフリート!?)
「何故、剣を貸してやったんだ?」
聞くと、店主は更に面倒くさそうな表情を浮かべた。
「貸してくれと言った時、この剣を思い切り振るうことが出来たら貸してやると言ったんだよ……」
「それで、振るうことが出来たと言うわけか?」
俺が聞くと、店主は苦々しく頷いたのだ。
「ああ……。だから、騎士団の副隊長と言えど出来るわけがないだろと高を括っていたんだが……」
「それが出来たから、貸したと言うわけか……」
俺がそう聞くと、店主は頷き答えてくれたのだ。
「ああ……。あれは人間離れをした膂力だったぞ」
それを聞いて俺は驚愕していたのだ。
(オトフリートの奴……、あの剣を扱えるのか!? 奴と戦ってみたい……)
ランシーヌから人間を超えた力を貰ってから、以前より好戦的になったというか戦いに高揚感を感じずにはいられなくなっていたのだ。
そう思うと、自然と笑みが零れていた。そんな俺の様子を見て、店主は首を傾げていたのである。
「何を笑っているんだ?」
店主が不思議そうに聞くと、俺は笑顔を向けたまま答えたのだ。
「いや……何でもない」
そんな俺の様子を見て、店主は更に怪訝な表情を浮かべていたのであった。
俺は店主に礼を言うと、そのまま武器屋を出て宿屋に戻っていた。
(オトフリートか……、彼は、どんな戦い方をするのか……)
そんな事を考えつつ、俺は皆と合流する為に急いで宿に戻るのであった。
宿に戻ると、既に皆集まっており出発の準備が整っていたのである。
そしてランシーヌが俺に向かって真面目な表情で手招きしていたのだ。
「どうしたんだ?」
俺が聞くと、ランシーヌは隣に来るように手招きをし、話始めたのである。
「実は貴方が武器屋に行っている間、皆と話し合ったの……」
「どんな事を?」
そう聞くと、彼女は真剣な面持ちで答えてくれた。
「魔女の屋敷は街中にあるの。そんな中、私達が戦おうものなら町の人に被害が出るし、騒ぎを聞きつけて兵士や騎士団が駆け付けて来るかもしれないわ」
「ああ……、そうかもしれないな……」
俺はランシーヌの話を聞いて納得していた。確かに彼女の言う事は正しいだろう。
そんな事を考えていると、彼女は話を続けたのだ。
「更に魔女の配下には騎士団の者達がいるから、戦うにしても町の外がいいと思うの……」
「それは分かったけど、どうやって奴等と外で戦うんだ?」
俺がそう聞くと、ランシーヌは胸を張って答えたのだ。
「それは私に任せて……」
彼女はそう言うと、双子達に目配せをしていた。すると、2人は頷いていたのだ。
(何をするつもりなんだ……?)
俺は不思議に思っていたが、ランシーヌは笑顔で説明を始めたのである。
「私が囮となって彼等を外に誘い出すわ……」
「えっ?」
俺は驚いて聞き返していた。すると、彼女は笑顔のまま答えてくれたのである。
「そうすれば魔女は私を追ってくるでしょ……。その間に皆は追って来た配下達と戦う事だけを考えればいいわ」
「ちょっ、ちょっと待て!」
俺は慌てて口を挟んだ。すると、ランシーヌは不思議そうな顔を向けてきたのである。
「何かしら?」
「いくらなんでも危険すぎるだろう!?」
俺がそう言うと、彼女は首を傾げた。
「大丈夫よ……。私には考えがあるから……」
彼女がそう言うと、俺は首を横に振っていたのだ。
「いや、そういう問題ではなくてだな……!」
俺が焦りながら言うと、彼女はニッコリと微笑んでいた。そして、俺の胸に手を置いてきたのだ。
「心配してくれるのね……、嬉しいわ」
彼女はそう言うと、俺の胸に頭を預けてもたれかかってきた。そんな彼女を俺は優しく抱きしめていたのだ。
「心配するのは当然だろ……」
俺がそう呟くと、ランシーヌはクスクスと笑っていたのである。
「そうね……。じゃあ、皆行くわよ!」
「わかった!」
「うん!」
ランシーヌがそう言うと、双子達は元気よく返事をした。俺は止めることもできずに、彼女の後に続いて行くことしか出来なかったのだ。
(もう……、何を言っても止まらないだろう……)
そう心の中で呟くと、諦めて着いて行くことにしたのだった。そして、俺達は宿を出てサービラの屋敷の方に歩いて行ったのである。
歩きながらランシーヌは俺の方を向いて話しかけてきた。
「貴方は何もしなくていいからね……」
彼女はそう言うと、俺にウインクをしてきたのである。俺は苦笑を浮かべながらため息をついたのだった。
(はぁ……、もうどうなっても知らないからな……!)
そして、俺達はサービラの屋敷の前に辿り着いたのだ。俺は屋敷を見ながら考えていた。
(さてと……、どうやって誘い出すかな……)
そんな事を考えていると、双子達が小声で話しかけてきた。
「これからどうする?」
「どうするの……?」
2人が不安そうな表情を浮かべると、ランシーヌが笑顔で口を開いた。
「私が先に行くわ……。貴女達のどちらかが、ここに残ってシャイラを救出して欲しいの……。どうする?」
彼女がそう聞くと、彼女達はお互いに顔を見合わせた後、ニアが口を開いたのだ。
「私が残るわ……」
そう言うと、ニアはランシーヌを見つめていたのである。彼女はそんなニアの頭を優しく撫でていた。
「ニア、頼んだわよ!」
ランシーヌがそう言うと、ニアは頷き答えていた。
「任せて……!」
「一応、誰か待機してるかもしれないから気を付けてね……」
ミラも妹を心配してか、真剣な表情で言っていた。
「大丈夫よ……」
ニアは笑顔で答えた後、ランシーヌと何か話をしていたのだ。そして、話が終わると俺の方に寄ってきたのである。
「それじゃ、ランシーヌが魔女達をおびき寄せて出て行ったら中に入るわ!」
「分かったわ……」
ランシーヌが返事をする。だが、俺は彼女に視線を向けて気になっていた事を話しかけたのだ。
「そう言えば、どうやっておびき出すんだ?」
すると、彼女はニコッと微笑んで答えてくれたのである。
「私が囮になって敵を町の外に連れ出すわ……。その間に、配下達の相手をしてくれればいいわよ」
「そうか……」
俺がそう答えると、ランシーヌはニッコリと微笑んでいた。
「心配しないで……。私は死なないわ!」
彼女はそう言うと、俺の頬に口づけをしてきたのだ。俺は照れてしまい顔が赤くなってしまったのである。そんな俺を見た後、彼女は微笑みながら手を振ってサービラの屋敷に入って行ったのだった。