第103話 剣士達の死闘の行方

文字数 3,451文字

 俺達は突然強制的に戦わされる事になったのだ。俺は憎しみが込み上げてきてハーランに攻撃を仕掛けると彼も俺に対して憎悪を持って攻撃を仕掛けてきたのである。

 お互いの武器がぶつかり合いカキ―ンという金属音を響かせていたのだ……。互いに武器を交差させて鍔迫り合いになった時、俺はハーランに叫んだのだ。


「お前とオルガに何があったかは知らん……だが、俺はランシーヌや双子の為にも負けるつもりはない!」


 俺がそう叫ぶとハーランは憎悪を剥き出しにして叫んだのである。


「黙れ! 貴様に何が分かる!?」


 彼はそう言うと、突然力を抜いて俺から離れたのだ。俺は彼の行動に驚きながらも警戒していた。すると、彼は武器を再び構えて俺に攻撃してきたのであった……。


「死ね……!」


 ハーランがそう叫ぶと、彼は俺に向かって剣で斬りつけてきた。俺は彼の攻撃を躱すと反撃に出たのだ。


「くたばれ!」


 俺がそう叫ぶと彼も俺の剣を受け止めて再び鍔迫り合いになったのである。そして、お互いに武器を押し合うと俺達は睨み合っていたのだった……。


「これでも喰らえ!」


 そう叫ぶと彼の背の籠から短剣が一斉に飛び出してきて俺の頭上に降り注いだ為、咄嗟に彼から飛び退き離れたのであった。

 降り注いだ短剣の1本が飛び退いた俺に向かって軌道を変えてきた。俺は身体を回転させて降り注いだ短剣を全て躱したのだが、軌道を変えた1本だけは躱しきれずに頬を掠ったのだ。


「何だ……!?」


 俺が頬から血を流しているとハーランは嘲笑いながら言ったのである。


「別々に短剣を操れるぞ!」

「何……!?」


 俺が驚きの声を上げると、ハーランは更に嘲笑いながら言ったのだ。


「俺の短剣が全て同じ軌道で飛んでくるとは限らんぞ」


 ハーランはそう言うと、俺に向けて短剣を再び放ってきたのである。短剣が一斉に飛んできて俺はそれを避けると彼はニヤリと笑って言ったのである。


「少々複雑になるが1本、1本別々に操れる……」

「……」


 俺は無言でいると、ハーランは次に短剣をバラバラに操ったのであった。

 向かって来た1本の短剣を躱すと、その後ろを飛んできた短剣は軌道を変え後ろに回り込み俺の背中を切り裂き血が流れ出たのだ。


「くっ!」


 激痛で呻きながらも、俺はハーランに向かって突撃したのである。彼は俺が突っ込んでくるとニヤリと笑い攻撃してきたのだった。


「これで終わりだ……!」


 彼がそう言うと同時に全ての短剣が一斉に襲い掛かってきたのだ……。

 その時、俺の予知能力が発動したが脳裏に浮かぶ襲い掛かる短剣のイメージが、それぞれ浮かび脳が処理しきれなかったのである。

 俺は迫り来る短剣を躱そうと試みるが、全てを避ける事が出来ずに左肩に1本だけ短剣が突き刺さってしまったのである。

 そして、その痛みで動きが鈍り、更に他の短剣も俺の右腕、太腿に突き刺さり血が噴き出したのであった。


「ぐっ……」


 俺は痛みに耐えきれず呻き声を上げると、ハーランは嘲笑いながら言ったのである。


「どうだ……!?」


 しかし、俺は膝を突くと右腕に刺さっている短剣を抜き取ってハーラン目掛けて投げつけたのである。


「……!」


 彼は咄嗟に躱して、俺はその隙に立ち上がり武器を構えて彼と対峙したのだ。その時、ハーランは俺に対して憎悪を剥き出しにして叫んだのである。


「俺に短剣を投げつけるとは……許さん!」


 ハーランはそう言うと全ての短剣を操り、今度は全方位から襲い掛かってきたのだ。俺はその攻撃を避けきれずに全身に無数の短剣が突き刺さったのであった……。


「ぐわぁあああああ!」


 俺が苦痛の声を上げると、ハーランはニヤリと笑って言ったのである。


「俺の勝ちだ……」


 しかし、俺は口から血を吐き出しながらも痛みを堪え剣を地面に刺したのだ。そして、ハーランは勝利を確信して再び攻撃しようとした時、俺は不敵な笑みを浮かべて言ったのである。


「勝つのは……俺だ……!」


 俺がそう言った瞬間、地面に刺した剣を抜くときに奴の顔に砂がかかるように振り上げたのだ……。


「うっ……!?」


 ハーランは驚きの声を上げると、俺は剣を振り抜き砂を飛ばした。すると、彼の目に砂が入り込み彼は目を押さえたのだ。そして、俺はその隙に彼の心臓に向かって突きを放ったのだった。


「うおおおお!」


 俺がそう叫ぶと、彼は目を押さえながら憎悪を剥き出しにして言ったのだ。


「貴様ぁ……絶対に殺す!」


 奴が俺に向かって剣を振りかざそうとしていたのだが、俺の突きの方が僅かに速かったのであった。

 そして、俺は彼の心臓を突き刺すと、彼は口から吐血しながら憎悪の目で俺を睨み付けて死んだのだった……。


「はぁ……はぁ……」


 俺は息絶えたハーランを見て深い溜息を吐いた後、地面に倒れ込んだのであった。そして、怪我で意識が朦朧としてきた時に脳裏に浮かんだのは仲間達の顔であった。


「皆は……大丈夫だったか……?」


 俺はそう言うと意識を失ったのだった……。



 ラドリックとハーランが死闘を繰り広げていた頃、双子とシャイラ、ベスはどのようにしてエヴリンと戦うのか悩んでいたのだ。


「どうする……?」


 ミラがそう言うと、ベスが皆に向かって口にしたのであった。


「襲い掛かっているのは幽体なので、どこかに本体がいる筈……。彼女の本体を捜し出すしかないでしょうね」


 彼女はそう言うと、皆は頷きそれぞれ捜索を開始したのだ。だが幽体のエヴリンが彼女達を追いかけていたのである。


「逃がさない……」


 エヴリンはそう言うと、シャイラに襲い掛かったのである。シャイラは逃げながらラミアに変身していたが、エヴリンはそれに追いつき彼女の体をすり抜けたのだ。


「くっ!」


 シャイラに猛烈な倦怠感と疲労感が襲い掛かったのである。


「すり抜けて攻撃するのは、かなり厄介ね……」


 彼女は倦怠感と戦いながら体を強張らせると、エヴリンはそんな彼女の背後から近付いたのである。


「これで……お終い……」


 彼女はそう言うとシャイラの背後から再びすり抜けようとした時であった……。


「この幽霊女……!」

「顔色不良の死にぞこない!」


 突然、エブリンの後方から双子の罵声が飛んできたのである。そして、エヴリンはその言葉に反応して2人の方に振り向いたのであった……。


「!?」


 彼女は振り返ると、怒りで我を忘れ双子を追いかけていったのである。危機を脱出したシャイラは呟いていたのだった。


「蛇の能力を使って捜さないとね……」


 彼女はそう言うと、気怠い身体を引きずりながら頬骨の下にある僅かな窪みに意識を集中していたのだ。

 この小さな窪みは特定の蛇が持っている周囲の生物が放つ微細な熱を感知し熱源を特定する器官であった。

 彼女が、この窪みからの情報が視覚に伝わると熱を帯びている物は赤の光を放ち冷たい物は青い光を放つのである。

 周囲を捜索すると周りには生物が放つ熱源は存在していなかったのだ……。


「他を捜すしかないようね……」


 彼女はそう言い放つと、エヴリンの本体を捜しに行ったのである。



 エヴリンは怒りで我を忘れて双子の後を追いかけて行ったのだが、2人は逃げながらも彼女に罵声を浴びせていたのだ。


「頬がこけた痩せ女!」

「目の隈は心が不安定でイライラして寝不足なんでしょ!」


 そう双子が叫ぶと、更にベスが追い打ちをかけたのである。


「空を飛ぶしか能がない舌足らず女!」


 彼女達は思い付く限りの悪口を言いながら逃げ回ったのだ。するとエヴリンは怒り狂って3人の言葉も耳に入らずに攻撃を仕掛けてきたのである。


「絶対……殺す……!」


 彼女はそう言うと、ベスに襲い掛かったが、彼女はつむじ風になり飛び上がったのであった。


「くっ……!」


 エヴリンはベスを睨み付けると、彼女の声がつむじ風から聞こえたのである。


「貴女が触れなければ私達はやられません……!」

「何……!?」

「貴女が私達を捕まえるには、触れなければならない……。でも私達は貴女に触れられなければいいだけ……」


 ベスはそう言うと、更に上空に飛び上がったのである。すると、今度はミラとニアは逃げ回りながら彼女に言ったのだ。


「この幽霊女! お前なんて怖くない!」

「舌足らずなんて怖くも何ともない!」

「くっ……!?」


 双子の言動にエヴリンは怒り狂うと、ベスを追いかけるのを諦めて2人を追いかけたのである。

 ミラは逃げる中でシャイラがラミアに変身している事に気付いたのだ。そして、彼女はシャイラがエヴリンの本体を見つけてくれる事に期待を懸けるのであった……。
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