第102話 魔女を乗っ取った者に躍らせられる配下達

文字数 3,030文字

 ランシーヌの放った爪の攻撃はオルガの全身を切り裂いた。しかし、オルガも同時にランシーヌを爪で切り裂いたのだ……。

 2人は血だらけになっても瞬時に傷が回復していくのである。そして、彼女達は飛び上がると空中で何度も衝突していたのだった……。


「くく……」


 オルガがそう笑うと、ランシーヌは無表情で言ったのだ。


「何が可笑しい?」

「我と汝がお互い戦いあっても、いつまでも決着がつかぬ……」


 オルガがそう答えるとランシーヌはニヤリと笑って答えたのだ。


「確かに我もそう思っていたところだ……」


 彼女達はお互いにニヤリと笑い合いながら攻防を繰り広げていたが眼下に目を向けると、それぞれの魔女の眷属達が戦いあっているのを確認していたのだ。


「あれは……」

「この身体を持っていた者の眷属達だ……」


 オルガがそう答えるとランシーヌは戦いを黙って見ていたのだった……。しかし、突然彼女は視線を逸らすとオルガに向かって喋っていたのだ。


「守護者という者が死ぬと、この体は不死身でいられなくなる……その時が決着をつける時よ……」


 彼女はそう言うと、オルガに向かってニヤリと笑って答えたのだった。


「そうか……奴等の決着がつくまで、ひとしきり待つとしよう……」


 オルガがそう言うとランシーヌも頷いたのであった……。



 俺とハーランはランシーヌ達が飛んで行った後、ルドレイの方面で大爆発が起こった事に気が付いた。墓地から見える町だった場所から大きなキノコ雲が見えていたのである。

 爆発の衝撃波で近くの森林の木々を激しく揺らし俺達にも襲っていたのだ。そして、上空を見ると妖気を纏った2つの影が見えていたのである。


「あれは……!?」


 俺がそう叫ぶとハーランも空を見ていたのだ……。


「一体何が……?」


 2人で上を見つめていると、後方から双子達とベス、シャイラが走ってやって来たのである。彼女達は息を切らしていたが、俺は彼女達に尋ねたのであった。


「大丈夫だったか……。しかし、ランシーヌ達は上空で俺達を眺めているだけだぞ……」


 俺がそう言うとハーランも上空を見てオルガを不審な目で見ていたのだ。


「あれはランシーヌともう1人の魔女……!?」


 ベスはそう呟くと、双子達も上空を見上げていたのだった。そして、シャイラが呟いたのであった。


「どうやら2人とも、さっきの稲妻が落ちて別人に成り代わったみたい……」


 彼女はそう答えると俺はシャイラに質問したのである。


「どういう事だ……?」


 俺がそう聞くと彼女は上空の2人を見つめて答えたのだ……。


「多分、ルドレイの町を消滅させたのは、あの2人だと思う……」

「何だって!?」


 俺が驚きながらそう叫ぶと、ベスが質問したのである。


「何者かが2人を乗っ取っているのですか?」


 シャイラは答えるかどうか迷ったのだが俺達を見て答えたのであった……。


「2人の会話からはオルガの方は、この世界を作り変えるとか言ってランシーヌの方は、それを阻止すると会話していた……」


 彼女がそう答えると、双子達も驚いていた。俺はハーランに視線を向けると彼も俺を見つめていたのである。


「最後の魔女になるという事は身体を乗っ取られるという事だったのか……」


 彼がそう言うと俺は頷いたのであった。そして、俺は上空にいるランシーヌ達を見ながら言ったのである。


「ランシーヌもオルガを乗っ取った者を阻止するために乗っ取られたのか……」

「もしかしたら、宗教上の物ではない超常的な神か魔が、魔女同士を争わさせて世界を作り変えようとしているのかも知れません……」


 ベスがそう予測すると、シャイラも同意見であった。その時、俺達の背後から空中を浮遊する女が近付いて来たのであった。


「誰だ……?」


 俺は姿が朧気で浮遊している女を凝視していたのだ。


「彼女は俺の妹だ……エヴリンという……」


 ハーランはそう答えると、彼女は俺達と話している兄を見て呟いたのだった。


「兄さん……何故……敵と……話して……いるの……?」

「エヴリン……敵は敵だが、今はオルガと黒髪の魔女がおかしな事になっている……」


 しかし、ハーランがそう答えても彼女は俺達を睨み付けていたのだ。


「お前達は……敵……」


 彼女はそう言うと、俺達に近付こうとしたが彼は手で制したのである。だが、彼女は俺達に敵意をむき出しにしていたのだ。


「待ってくれ、エヴリン! 今は敵ではない!」

「兄さん……オルガ様を……裏切るの……?」

「違う! 今はあの2人が何をするのか様子を見ないと……」


 俺は兄妹が言い合うのを黙って見ていた。彼女は俺達に対して嫌悪感を見せていたが、暫くするとハーランの言う事に従ったようなのである……。


「分かった……兄さんに……任せる……」


 彼女がそう呟くと俺達は上空を見上げていたのだった。



 オルガは上空から地上の様子を見ていたが、ランシーヌもそれに続き見下ろしていたのだ。


「奴等が我等をジッと見ているぞ……」


 彼女はそう呟くと、妖しく笑みを浮かべていた。


「それなら戦うように強制的に躍らせるか……」


 ランシーヌはそう言うとオルガも同意し、それぞれの手から禍々しい光を出したのである。すると上空から閃光が俺達に降りかかっていたのだ。


「何だ!?」


 俺はそう叫ぶとハーランも驚いていた。そして、ベスや双子達も驚きの表情で見ていたのである。

 そして、閃光が俺達に直撃したのだ。その閃光によって俺達はハーラン兄妹に強い敵意を強制的に植え付けられていたのである。

 ハーラン達も同じ様に俺達に敵対心を植え付けられていたのだ。


「ハーラン……」


 俺は怒りを込めながら彼に話し掛けると、彼も怒りを込めて答えたのである。


「お前達を……打ち負かしてやる! エヴリン、奴等を殺せ!」


 彼はそう叫ぶとエヴリンにも戦意が伝播していったのであった……。

 そしてエヴリンは俺達に敵対心を持って叫んだのであった。


「殺す……!」


 2人の魔女が殺意を込めて命令すると、俺達はそれに抗う事が出来ずハーランに向かって攻撃を開始したのである。エヴリンは双子とシャイラ、ベスに立ちはだかっていたのだ。

 そして、俺とハーランはお互いに武器を構えて激突したのだった……。



 オルガを乗っ取った者がルドレイの町を滅ぼした時、カイラニは水晶玉でその様子を見ていたのだ。


「オルガ様がルドレイを一瞬で壊滅させた……」


 彼女がそう答えるとオルガが最後の魔女になった時に空が曇り稲妻に打たれて豹変したのを水晶玉で見ていたのである。


「オルガ様であってオルガ様ではない……。その力も魔女の力を遥かに超えている……」


 そう呟くと、上空で浮遊している魔女2人を見つめていたのである。


「あの2人が人智を超えた神の様な存在なのか……? しかし、2人で何を話しているやら……?」


 彼女はそう呟くと地上ではハーラン達が2人の魔女による閃光によって黒髪の魔女の配下に向かって攻撃を仕掛けていたのだった。


「これは……!」


 そう叫ぶと水晶玉で見ていたハーラン達に異変が起こったのである。彼らは敵対心を強制的に植え付けられていたのである……。

 そして、敵意を剥き出しにしてお互い睨み合いながら激突したのだった……。


「オルガ様や黒髪の魔女を乗っ取った者の仕業か……」


 カイラニは呟くと、上空で浮遊している2人の魔女を睨み付けながら怒りに震えていたのである。

 水晶玉の映像はここで終わり隣では魔法で眠らされたエヴリンの本体が横たわっていたのであった……。
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