第２７話　苦渋の選択

　俺は、この場で戦うのは不利だと思い、どうすればいいかを考えていた。

（どうするか？）

　アンドレアの配下であるクレム達も戦いに参加してくるだろう。

　そうなると、こちらが不利な状況になる可能性が高いのだ。

　それに、魔女がいる状況ではクレム達に勝てるかどうかも分からなかったからである。

　俺は打開策を考えていると、アンドレアが剣を抜いて構えた。


「さあ、始めましょうか？」

「待ってくれ！ 戦いに来た訳じゃない！」

「何を言ってるの？ 私に近づいてくるなんて、殺してくださいと言ってるようなものでしょう？」

「落ち着いてくれ！ 俺達は戦う意思はない！ あんたの元に投降する！」

「投降したら私に何か得でもあるの？」

「俺達は、魔女の事を知っている！ 魔女の情報を教える！」


　俺は、この場を切り抜けれるようであれば嘘でも何でも良かった。


「もし俺達を殺せば俺達の魔女は、この町から逃げ出すぞ！！」


　俺は必死に叫んだ。


「それなら、私の屋敷にラドリックと一緒に滞在しているランシーヌという女がいます。彼女が魔女でしょう……」


　クレムは冷静な口調で答えていた。


「俺達が彼女を呼び寄せれば、お前の目的に叶うと思うが……」

「なるほど、人質ということか……。まあいいだろう……」


　アンドレアは少し考えた後、承諾してくれた。


「ただし、貴方達には牢屋で大人しくしていてもらいましょう……」

「分かった……」

「では、そいつ等を捕らえて……」


　アンドレアはクレムに命じると、クレムや兵士達が動き出した。

　しかし、俺の行動に双子達が詰め寄った。


「ちょっと！？ どうするつもり？」

「ランシーヌを裏切るの！？」

「仕方ないだろう……。このままだと、殺されてしまう……」

「だからって……」

「……」


　ニアは不満気でミラは黙っていた。

　そして、俺達は兵士達によって牢屋へと連れて行かれた。

　広場での様子を夜目が利けば、蝙蝠が偵察するように上空を飛んでいるように見えたのだった。

　ラドリック達は地下にある牢獄に閉じ込められたのである。

　今は牢屋の扉の前に見張りの兵士がいるだけだった。

　彼は、床に座り込むと今後の事を考え込んでいたのであった。


　一方、その頃、ランシーヌは使い魔の黒狼の後をつけていた。

　黒狼がラドリック達の匂いの跡を辿りながらアンドレアの館に向かって行った。

　使い魔の中には黒狼だけでなく、蝙蝠もいて空からも偵察していたのである。

　ランシーヌは使い魔である蝙蝠の視界を通して館の様子を見て呟いていた。


「あれがアンドレアの屋敷ね……。なかなか立派な建物ね……」


　アンドレアは町の高台にある領主の館で暮らしているようだ。


「ん……？ 何？ アンドレアの館の広場で兵士が騒いでいるわね……」


　使い魔の視点を変えてみると、アンドレアの配下の兵士が集まっている様子が見えてきた。


「何かあったのかしら？」


　使い魔の視点で見ていると、アンドレアと思わしき女性が指示を出している様子が見えた。


「一体、何があったの？」


　暫くすると、クレムがラドリック達を連行していった。

　どうやら、ラドリック達は捕まったようである。


「ふーん……。これだと隠密に侵入することは出来ないかもね……」


　今は、ラドリック達が捕まったことで館を守る兵士達の警戒度が高くなっているだろう。


「それにしても、ラドリック達は何処に捕らえられたのかしら？」


　ラドリック達が捕らわれている場所が分からないのである。


「困ったわ……。このままじゃ、助けれないわ……」


　ラドリック達が捕えられているのは、アンドレアの館の地下の牢獄だったのだが彼女は、知る由もなかった。


　その頃、館の一室でアンドレアはシャイラ、ダリル姉弟に双子達の事を話していた。


「貴方達は、あの双子の肉体をどう思う……？」


　アンドレアは笑みを浮かべながら訊いた。


「美しいと思います。まるで妖精のように……」


　ダリルは真面目な顔をして答えていた。


「私もそう思います」


　シャイラも同意した。


「今夜は、あの双子の肉体を辱めてみたいと思わない？」


　アンドレアは2人に問い掛けた。


「彼女達は魔女の配下、どのような能力を持っているのかわかりませんよ……」


　シャイラは不安気な表情をしていた。


「確かにそうですね……」


　ダリルもシャイラに同意した。


「シャイラ、貴女には人を魅了させる能力を与えた筈よ……」

「その通りです」


　シャイラは自信に満ちた顔で答えた。


「ならば、大丈夫でしょう……」


　アンドレアは意地悪な笑みを浮かべながら言ったのである。


　俺は牢屋の中で椅子に座って寛いでいた。

　ここは地下の牢屋で窓もなく薄暗い部屋である。

　因みに、俺と双子は別々に牢屋に入れられていた。

　俺は、牢屋の中をウロウロしながら考えを巡らせていた。

　すると、アンドレアと配下と思わしき少女、少年を連れ双子達の牢屋の前までやって来た。


「貴女達には、これから辱めを受けてもらうわ……」


　アンドレアは笑顔で双子達に告げた。


「えっ！？」

「私達に何をする気？」


　双子達は怯えたような目で見ていた。


「シャイラ、彼女達を魅惑しなさい！」

「分かりました……」


　シャイラは答えると目を閉じて意識を集中させていた。

　そして、彼女の目が開いたと思った瞬間、眼が赤く光ったのである。

　その目を見た途端、双子達は苦しそうな声を上げていた。


「うぅ……」

「あぁ……」


　双子達の瞳から輝きが消えていき、ぐったりとしていた。


「これで、この子達は私達の言うことを何でも聞く人形になりました……」

「よくやったわ……」


　アンドレアは満足気に微笑んでいた。


「さて、そろそろ行きましょう……」


　姉弟は牢屋の鍵を開けると、双子達の手を引いて立ち上がらせた。

　アンドレアは俺の牢屋の前に来て、こう告げたのである。


「彼女達を連れて行く……」

「ちょっと待ってくれ！ 彼女達に、酷いことはしないでくれ！！」


　俺は慌てて叫んだがアンドレアは無視して、そのまま立ち去ったのである。