86

文字数 318文字

 次郎のソフトボールの試合には、淳之介とマリアは何処にでも応援に行った。

 マリアは、どの保護者よりも大きな声で応援する。二〇〇メートル先まででも、その声は届きそうだった。

 ピッチャーをしている次郎が、フォアボールを出すと、

「打たせろ、打たせろー!
 どまんなかに投げたち、よう打たせんけん!」

 と叫び、ヒットを打たれたら、

「まぐれや、まぐれー!」

 とベンチの誰よりも大きな声を出す。

 試合のあった夜、家で食事をしながら、

「それにしても、かあちゃんの声、でか過ぎ」

 と次郎が笑って言う。

 一郎が中学二年生の時、大好きだったおばあちゃんが病気で死んだ。

 葬式の時、一郎は肩を震わせ泣き続けた。

 その姿を見て、淳之介はもらい泣きをしたのである。




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み